本当に美味しいウイスキーはどれ?

ウイスキー選びというのは中々に難しく有名になると味が落ち、しかし美味しくないと有名にならないという相反する事情があります。まるで料理屋のようです。美味しくて有名になると、客が増えすぎて昔のように丁寧な仕事ができなくなり、店員も増えて食材も厳選できずに雑になっていく。雑になっても名前が売れているので客が来るという悪循環。

ウイスキーもまた同じように有名になると味が落ちていく傾向にあります。大麦から作られますが蒸留所の規模によって生産量に限りがあり、それでいて10年以上もの長い年月を掛けて貯蔵・熟成されるのです。急に人気が出て需要が上がると、品質を下げて出荷量を増やすしかありません。全国でも有名なザ・グレンリベットやマッカラン、グレンモーレンジが味が落ちているのは有名ですが、蒸留所が大きくなりすぎて大手資本の参加に入り大量生産化し始めるのもその一因です。

今話題の国産ウイスキーもそうです。真面目に作っている時代を評価されて近年人気を博していますが、国際的にも売れるようになってからは原酒が枯渇して手頃で美味しい価格帯が次々と終売になっています。今では”ノンエイジ”と言われる年数表記の無いものが主流となり味は落ちる一方です。

そこで少しマイナーでありながら、手に入りやすいオフィシャルボトルを5本選び、同時に開封してどれが美味しいか比較してみました。ラガヴーリンは6千円を超えるショップもありますが、いずれも概ね3千円から5千円程度で入手が可能です。

どれが一番美味しいか、手っ取り早く知りたい人は最後までスクロール!(笑)

Aultmore オルトモア 12年

1897年にアレクサンダー・エドワードによって、スペイサイド地区のフォギー・モス(霧が深い湿地)と呼ばれる場所に設立された、オルトモア蒸留所のシングルモルトウィスキー。
12年はフォギー・モスから引いた水とピートを使用しない麦芽によりフレッシュでドライなフィニッシュが楽しめる、バランスのとれた味わいです。 武川蒸留酒販売より引用

バカルディジャパンの取り扱いのウイスキー。アルコール度数が46度と少し高めです。「デュワーズ」などブレンデッドウイスキーのキーモルトとして使われていたためシングルモルトとしては知名度はやや薄いです。色からするとバーボン樽が主体でしょうか、明るい色味をしています。

テイスティング感想メモ

抜栓すると最初は一瞬だけ穀物酢、白バルサミコ、そこからリンゴ酢、白い花、だんだんと子供の駄菓子のガムのような安っぽい甘い香りに変化してゆきます。
味は最初はハチミツ。そこからオイリーで肉の脂身のようなニュアンスに。後半は炒っていないアーモンドのような風味。水割りにすると突如として瑞々しい青リンゴ+アップルミントに変化します。まだ空けたてなので感想は変化すると思いますが、近年の12年物のウイスキーとしては非常に優秀と言えます。

ウッディな香りと、ドライな味わいは食事に合います。和食から中華まで、水割りやソーダ割りにしてもいける万能なウイスキーです。過去のグレンリベットはそんな感じでしたが、今ではグレンリベットは美味しくないのでオルトモアがおすすめ。

Clynelish クライヌリッシュ 14年

1819年に創立されたクライヌリッシュ蒸留所は、1967年に隣の敷地に元と全く同じ設計で建てられ、
新しい蒸留所として生まれ変わりました。旧蒸留所はブローラと改名して、1983年まで稼動していましたが、
現在はクライヌリッシュ蒸留所のみが稼動し、通好みのウイスキーを造り出します。
クライヌリッシュ14年は甘くフローラルな芳香、沿岸の香味と、ライトかつドライなフィニッシュを持つウイスキー。微かなアイランド系のキャラクターを持つ沿岸地方のシングルモルトの典型と言えます。
地域:北ハイランド、スコットランド 設立:1819年(旧クライヌリッシュとして、その後ブローラと改名、現クライヌリッシュとしては1967年)モエヘネシーディアジオ公式HPより引用

タヌキのようなトレードマークは、どうやら山猫のようです。蒸留所の近くに出現するのでしょうか。
おそらくバーボン樽が主体で琥珀色が美しいです。完成度が非常に高く、抜栓したてをレビューするのは長い眠りの山猫を叩き起こすようなものですが、他と条件をあわせるために乱暴に書いてみます。過去の経験からすると恐らく抜栓して2~3ヶ月、ボトルの半分位で美味しさのピークが来るかと思います、参考までに。

テイスティング感想メモ

開封後に一瞬だけ生クリームのような香り。そしてレモン、それもオレンジっぽい色のレモンなど柑橘系。砂糖の優しいにおい。味わいはインク系のアルコール、バターっぽいクリームチーズ、余韻にアルコールが強くです。時間が経つと水っぽい。加水すると、落ち葉を踏んだときのような秋っぽいにおい。田舎の匂い。水割りでキャラメル、それも映画館のキャラメルポップコーン。

今は桜を楽しむ3月となりましたが、瓶の中は完全に”秋”です。時間が経てば感想は変わる可能性がありますが、もし10月から11月に入る直前など、ウイスキーを空けるのであればクライヌリッシュは完璧に似合います。屋外で焚き火するときなんかパーフェクトです。若々しい男性が飲むというよりは、やや白い毛が混じってきた初老の男性に似合います。
これは、とてもではないけど女性的とは表現できません。

Oban オーバン 14年

オーバンは免許を受けた蒸留所としてはスコットランドでも最古の蒸留所の一つ。 オーバンの街は蒸留所を中心に発展したといっても過言ではないほど、地域社会に貢献してきました。 スコットランドで最も小さい部類に入るランタン型のポットスチルにより、 ハイランドとアイランズの特長を併せ持つ個性的なモルトが誕生します。
オーバン蒸留所が元々は漁村であった場所に創業して以来、200年の間に街はシーサイドリゾートとして発展しました。しかし、この西ハイランドシングルモルトは昔と変わらぬのんびりとした伝統的な製法で作られています。ライトなスモーキーさ、ミディアムボディで食欲をそそるスパイスの味わいを併せ持ちます。地域:西ハイランド、スコットランド 設立:1794年
モエヘネシーディアジオ公式HPより引用

ややシェリー?っぽさがある樽香、結構アルコール臭い。この安っぽいシェリー感は場末の居酒屋で飲んでる感じがある。グレンドロナックも昔はシェリーの質が高かったけど、近年はオーバンのようなシェリー感。これならグレンファークラスのほうが良さげ。アルコール臭さが強烈なので、もしや数ヶ月から半年位してボトル後半になってから本領発揮する感じなのかな。少なくとも抜栓直後にウマいという類のウイスキーではなさそうです。

テイスティング感想メモ

抜栓すると、一瞬だけ(数秒間)花火の火薬のニオイ。手持ちすすき花火に火を付けた瞬間のようなニオイがありました。
そこから段々と焦がした蜜のようなニオイに…。焼いたトーストのようなニュアンスも。後半は再生紙、神保町で買った中古本の匂い。またマダム向けの香水、濡れた木。飴、蜜、プリンの底にあるカラメルの味わい。アルコール感が強い。

面白いことに加水すると、突如として大輪のローズが朽ちる寸前のにおい(一瞬・数秒だけ)そこから血?の鉄っぽい香り、18-8のような安っぽいステンレス金属感。水割りすると桃の皮、ヒノキ+桃。飲み方で香りがコロコロ変わるので楽しいですネ。

今後に乞うご期待!

Talisker タリスカー 10年

ハイクソー!二度と飲まんわ

アイドルの熱心なファンが、ある時に突然アンチになって、そのアイドルの酷い所や悪い所を事細かくツイッターやブログに書き込むというケースが多々存在するようです。元信者というのが最もアンチになりやすいと言います。何故なら彼らはその世界観に完全に浸り込んで、陶酔していたので、理想でない方向に行くことが許されないのです。

私が完全にコレになりました。熱心なタリスカーマニアで、UDのボトラーズからカスクストレングス、ノースなど過去にしこたまタリスカーを飲んできました。旧ボトルが美味しかった、とまことしやかに噂されていて現行品のタリスカー10年を買ったのですが水っぽくて飲めたもんじゃありません。カリラとタリスカーだけはしこたま飲んできました。
「黒胡椒の弾けるような」などと表現されたタリスカーテンは過去の物、これじゃあまるでイヌのショ○ベン。氷で冷やしても水で割っても、ソーダで割っても、「タリスカー的な何か」の粋を出ません。

元信者アンチの私が言う、絶対に買わない方が良い1本です。ストーム、ノース、18年、25年、30年は飲んでないので評価できませんが、少なくとも現行の10年は避けた方が懸命です。

Lagavulin ラガヴーリン 16年

うまい…が、これじゃない!!
あれですね。当時中学生のときに好きだった女の子に、成人式で出会った時のなんとも言えない気持ちですね。
もっと、どっしりとピートが、初めて吸った葉巻のような重厚感があったはず。飲みやすくなってるラガヴーリンなんて違う。という感想です。
ストレートでも美味しいですが、沈香の伽羅のような木を焼香したときの重たい香りがあったはず。例えが悪いけど墓参りの束ねた線香のような…う〜ん、なんて表現すればいいか分からないけど、ラガヴーリンがラガヴーリンであるための大切な香りが欠如している。

味わいの方は非常に美味しい!氷を入れるとヨードチンキや日局木クレオソート(正露丸)のような臭みが強く出てくる。もっと強烈だった気がするんだけどな〜。味が代わったのか、私の嗅覚が加齢と共に落ちたのか、色々経験したので強烈だと思えなくなったのか、今となっては分かりません。気になるのでいずれラガヴーリンの旧ボトルを買って試してみます。

6千円以下で本当に美味しいウイスキーはこれ!!

湖から女神が出てきて、1本ウイスキーをくれるとしたら「ラガヴーリン16年」をもらいます!思い出補正を抜いても美味しいです。次点で「オルトモア12年」そして「クライヌリッシュ14年」クライヌリッシュは時間が経てば味や香りが本領発揮すると思いますが抜栓直後はやや不利です。

ラガヴーリンは煙臭く香りに好みがあるので、贈答品としてオススメなら「オーバン14年」かなぁ。う〜ん、どれも贈答に向いていない気もする。贈答ならグレンリベットかマッカランかな〜。しかしウイスキー選びは難しい…。

とにかく、男であるなら迷ったらラガヴーリン。これ間違いない。

おわり

[PR]『朝香珈琲』では、東京の地名をモチーフにした特別なコーヒーブレンドで、あなたの日常に新しい彩りを。可愛らしいパッケージの中に、都会的なコーヒータイムをお届けします。
Share.

1989年 静岡市出身。主な執筆分野:ライフスタイル、旅行、料理、お酒。