アデルフィへの信仰心が試されるウイスキーセット

はっしー

ウイスキーのワクワク感というのは、開けてみるまで味が想像できないという所にあります。
最近でこそ洋酒店の有料試飲コーナーが充実してきて、希少なボトルでも1ショット(30ml)から手頃な価格で試して購入するという選択肢ができました。それでも多くのボトルは試飲が用意されておらず、限りある予算で味の分からない1本を買うしかないのです。ウイスキーにギャンブル性のあるワクワク感が生まれる理由の一つに、同じ蒸留所内でも樽が違うと味が全く異なるということがあります。

例えばリナシメント蒸留所があるとして、2000年に蒸留して樽詰め、2020年に瓶詰めしたとします。同じ時期の20年物ウイスキーでも独立系瓶詰業者(インディペンデント・ボトラーズ)によって味の方向性が異なるのです。
つまり自分の好きな蒸留所のウイスキーでも、瓶詰めする会社によって美味しさの傾向が異なります。ある会社はフルーティーで華やか、ある会社はドライで木樽の香りが強い、など別の蒸留所と間違えてしまうほどにキャラクターに違いがあります。

なかには好きな蒸留所でありながら、飲めないほどに嫌いな味わいであったり、逆に天使が降りてきたかと思えるほどに奇跡的に美味しい1本があったりと、キャップを空けるまでそれが分からないのです。そしてシングルカスクであれば、美味しくても不味くても世の中に数百本しか存在しない、しかも日本への割り当ては数十本で既に完売。私の手元にある1本のウイスキーは9割以上残っているのに急に寂しくなる。後ろ髪を引かれる思いで、残った天使のウイスキーを飲むこともあるのです。

つい先日、「アードナムルッカン スピリット リリース 2019」の記事を書きましたが、私はテレビやYoutubeではなくアデルフィのボトル商品ページから知って購入したのです。昨年あるアデルフィの奇跡的に美味しい一本に出会ってしまい、そこから虜になり何本も買っているという訳です。今回はアデルフィの貴重なウイスキーの飲み比べセットを入手したのでご紹介します。

Adelphi Nightcap Edition #6 Whisky

名前でも分かる通りナイトキャップ=就寝前に飲むウイスキーとしてリリースされています。イギリスの一部では食前酒、食中酒、食後酒、そして寝る前の一杯としてナイトキャップを嗜む文化があります。この4本は就寝前の一口に最適なカスクをセレクションした特別なセットです。中にはこのようなカードが入っています。

アードモア 2000 15年 スペイサイド 57.6% cask#244

ファーストフィルのアメリカンオークのカスクから造られたこのワインは、甘く、軽く、非常にバランスの取れたピーテッド・スペイサイダーで、穏やかで余韻のあるスモークが特徴です。クリーミーなお粥に柔らかい黒糖を入れたような。またラプサンスーチョンティーのような煙を感じます。

ardmore 2000

カンバス 1988 27年 ローランド 48.0% cask#59253

アデルフィ・ナイトキャップシリーズでは珍しい、既に閉鎖されたカンバス蒸留所のシングルグレーン・ウイスキーです。淡いゴールドの色をしたこの特別な一杯は、マカダミアナッツオイルの香りがほのかに漂う、軽やかでフレッシュでフローラルな味わいです。稀少な逸品です。

cambus 1988

ロングモーン 1992 23年 スペイサイド 50.0% cask#48444

ヨーロピアンオークのシェリーホグスヘッドを使用し、豊かな銅色をしています。
優しい余韻のムース。なめらかなケーキミックスとブランデーバター 、フィニッシュにはトフィーを使ったイチゴジャム。

longmorn 1992

ブナハーブン 2005 10年 アイラ 56.0% cask #800141

甘くてスパイシーなピーテッド・シェリーカスクの香りです。砂糖漬けのジンジャーに洋ナシ、シガー(葉巻)やタバコのスモーキー、それにベーコンのエッセンスを加えたもの。熟したフルーツとアニスシード。

bunnahabhain 2005


美味しそうに見えるだろ…?コレ全部不味いんだぜ……。

実はコレ、今年一番失敗したウイスキーたちです。
とんでもないウイスキーセットを買ってしまいました。

購入前:こんなに素晴らしいウイスキーセットがあるなんて!!最高にハピネス。

購入後:最高に素晴らしいウイスキーセットを手にしてしまった……。写真を撮ってみんなに紹介しなきゃ!(使命感)

実飲後:なんてアホ過ぎる物を買ってしまったんだ…。無限に続く自己との対話。

1万円も払って、こんなに不味いウイスキーを買ってしまった。

二週間後:再び飲んでみると意外と美味?時間経てば飲めるのかも?

開封初日に感じた私の感想と、2週間後に試したライターりんりん氏の感想を織り交ぜて書いてみます。

カンバス 1988 27年

香り:シトラス、花ジャスミン、白い花  グレープフルーツ、穀物酢。動物油。
味:ラーメン屋のラード?、白ネギの花、フィレンツェのカバンや、動物のかわ、スパイシー?アジア系

加水するとKURE(呉)5-56の錆取り多目的スプレー。
氷を入れると、リンゴ、青りんご、スパイス?さつまいも?芋焼酎、医学的見地によると、黒霧島。

りんりんの感想:インク、ツツジ

ロングモーン 1992 23年

香り:5回くらい樽詰めを繰り返したような死んだシェリー。雨の日の昼に混雑している有楽町駅。
味:柑橘の酸味、甘いミカン、酸味のない柑橘、甘夏、甘夏のジャム、油の画材。やっすい使いかけのアクリル絵の具。
山梨の白ブドウ、オイリー、安いトリュフのオイル、瀬戸ジャイアンツ、ポルチーニ。
何れにせよ安いイタリアきのこ、放置したぶなしめじ。冷やすと落ち着く。

りんりんの感想:バニラ、エステリー、木のぽってり、メープルシロップ、サンダルウッド、

ブナハーブン 2005 10年

香り:ホコリくさい、生臭いピート、締め切った部屋、カビ臭い、エンターテイメントのカビ。ハワイの路上、人混み?失敗したラフロイグ
味:青い唐辛子、ピーマン、完全にラフロイグ。びっくりするほどラフロイグ。
南国系の花、南国というよりはタイ? ハイビスカス、イチジク系の甘み、ピート、杏の甘み、

昔のラフロイグ、ラフロイグ10年にフルーツを足した感じ。ラフロイグに油性絵の具を3~4色、足した感じ。ピート、ウッド。

りんりん感想:香木

アードモア 2000 15年

香り:洗った米?インク?トウモロコシ、穀物、タタミ、米油、みかん、田舎の洗った米。ちょいスモーキー。バスの排気ガス。
味:花開く、とりそこねた青い草、い草、ちょいピート、蒸した草、氷で紙、猫砂。

りんりん感想:すっげーまずいダージリンの渋さ BOPダージリン

アデルフィの信仰心が試されるウイスキーセット

美味しいという先入観ありきで不味かったウイスキーというのは本当に珍しいです。
主張のある不味さです。多くの不味いウイスキーというのは、「あれ?香りが弱いな」だとか「なんかアルコール臭いな」といった想定の範囲内の不味さなのです。このアデルフィのボトルセットは有名蒸留所や閉鎖蒸留所などの希少なウイスキーをカスクのまま詰めたという素晴らしいコンセプトなのですが、味の方が個性的すぎるのです!

これを不味いと評価してしまうのは簡単ですが、ポジティブな部分もあるはずと思い味をレビューしてみました。
そして摩訶不思議なのが2週間前に私がレビューしたときのネガティブな要素が、本日りんりん氏を招いてテイスティングしてもらう時には消えている箇所もあったのです。1本のボトルという不確定要素の上に、更に抜栓後の変化が加わり可能性が無限大になるというのがまたウイスキーの面白いところです。他の蒸留酒、例えばジンやウォッカ、焼酎なども美味しく個性がありますが、ウイスキーほど1本ごとの味が異なり開封後に良くも悪くも変化することはありません。

そんなわけで私達はこっぴどく酷い目にあっても懲りずになおまた、アデルフィのリリースするボトルを盲目的に購入するのです。(おわり)

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