オールデンのAlden Norwegian Split Toe Blucher on Commando Sole #8 cordovanを買ったので開封してみます。

Unboxingという言葉が英語の革靴の記事でよく使われており、日本語でどう表現するのか、いくつかのブログで「開封」と言っているようなので真似してみた次第です。

そう言っておきながら、実は表題に偽りがあります。本当の開封のタイミングでは写真を撮っていなかったので(そんな写真撮ってどうするの?という思いがありました)、一度開けて足も入れた後に、この記事を書くにあたってやっぱり箱を開く瞬間も買い物の醍醐味だよなと思い直してもう一度しまい直し、「開封」してみたのです。

二度目の「開封」なので、靴ひもは自分で通してしまった後の写真です。本当の開封時は一番下の穴だけ通され余りの紐は引き解け結びされている状態でした。

そんなわけで最初からケチがついていますが、靴箱の中身は正真正銘のオールデンです。ベルギーやオランダに店舗を構えるFrans Booneというお店で買ったもの。といっても、筆者の住んでいるオランダのライデンという町から遠くはないロッテルダムにも店がある同店ですが、ロッテルダムの駅や中心部からは少し離れていて、そこまで行くのも面倒だったので簡単にオンラインで買いました。

シューツリーとシューバッグ。Frans Booneではオールデン純正のツリーが無料でついてきました。ラストに合わせたものではない金具でウィズが変化する方式のものですが、必要十分に靴にフィットします。淡黄の靴袋も優しい手触りでいい感じです。

昔、上京した時にユナイテッドアローズのDistrictというお店に憧れて、そこで大学の入学式用のスーツを買ったことがあるのですが、合わせる靴としてオールデンの靴を試着までしましたが、当時でも10万ちかくはするしろもの、予算が足りず結局買いませんでした。そのあと、革靴には興味を持ち続けていましたが、オールデンには縁がなく、別に欲しいという思いもなかったので、十年以上が立ちましたが、最近ふとオールデンのコードバンを体験するのも一興かなと気まぐれで買う気になったのでした。

コードバンは水に弱いとずっと先入観があったのですが、最近方々のブログを読むにつれ、コードバンはタフな素材で、雨で確かに水玉のようなシミはできるがケア次第で簡単に消えるし、オールデン公式がそのまま履き続けていればそのうち消えると言っているといったことを読み、ビスポークを中心としたメンズウェアの情報を発信するブログの中では一二を争うPermanent Styleで雨靴用の靴としてコードバンが紹介されていたのを見て、それほど気にする必要はないのかなと思い直しました。筆者の住んでいるオランダはにわか雨が多いことで有名でここでコードバンを履くなど狂気の沙汰だと考えていたのですが、実はそれほど雨を気にしなくてもいいとなると話は別です。

実はこの靴を買う前にハンガリーのVassの靴を買っていて、そちらは普通のカーフだったのですが、雨に降られてものの見事に雨染みが出来たこともあり、とどのつまり革は雨に弱いのだから何でもいいのだとも思うようになりました。そういうわけでむしろ地面が濡れていても平気なコマンドソールのこの靴を買った次第です。

Alden Norwegian Split Toe Blucher on Commando Sole #8 cordovan。インソールには’made expressly for Frans Boone’と入っていますが、色もデザインも特別なものではなく、ただ注文に応じて作って卸したというぐらいの意味合いだと思います。

開封した時の印象としては、「パテントレザー」みたいな安っぽい光沢というのが正直なところでした。しかし馬毛ブラシで馬鹿みたいに擦っていると心なしか深い光沢が生まれてきました。続けてブラシをかけているとどんどん輝きが増してきたので、気のせいではないと思います。

オールデンといえば雑な作り、というのが購入したことのある人の間では半ば常識なのではないかと思います。開封してすぐに気づいたのはアウトソールの出し縫いで一部潰れているところがあるという点でした。注意深く見ると、縫い目の形もいびつだし、染料が靴の内側についてしまっているところはあるし、噂通りの雑さだと思いました。


また、この踵の穴――調べると靴のつり込みの際に踵を固定するための釘のあとだそうですが、ドレスシューズでこんなものが残っているのを見たことがありません。例えばこのVassの靴――確かに内側から見るとそのつり込みの穴が開いているのに気付きますが、オールデンのものに比べるとずっと小さく、また外側からは見えません。丁寧に作ろうと思えば、外からは見えないようにできるということです。

左足
右足
内側から見た穴の様子

それをしないというのはおおらかなのでしょう。そういうものだと思えば気になりませんが、これを手作りの証だといって有難がるような気にはなりません。

こちらはVassの踵、内側から見れば穴はありますが、外からはまったく見えません。

足入れしてみた感想はというと、サイズはぴったりでした。参考までに筆者は基本的にUK9で標準のウィズをいつも履いています。USサイズはワンサイズ上げとかハーフサイズ上げとか悩ましい所ですが、ハーフサイズ上げの9.5Dでちょうどでした。ラストはアバディーン(Aberdeen)。オールデンの中では細身と言われるラストです。しかし多くのブログで指摘されているように私も踵の浮きを感じました。インソールの踵部のクッションが比較的厚く浮き出ていることも関係しているのか、ヒールカップが低く感じます。

踵以外のフィットは、まだ外に出て試していないので確かなことは分かりませんが、悪くありません。全体をちょうどよく包んでいる感じです。特筆すべきフィット感といったものはないですが、土踏まずも支えられていると感じます。

アウトソールを含めた全体の見た目はNorwegianと名前に入っているように重厚ですが、アッパーだけをみればまあまあ細身でそこそこにくびれた形をしている。そこが好みです。

コードバンの輝きは確かにすばらしいです。カラー#8と呼ばれるバーガンディも、部屋の中で少し歩いただけですが、甲の履き皺だけ少し薄くなったりしているので、これからエイジングが楽しめそうです。秋で日照時間が減り、曇り空が多くなっているので、その暗い光の中で見た印象しか今のところ得られていないのですが、夏の強烈な光の下ではどんな色に見えるのかも気になります。

しかし作りという点に関して言えば、予想していた通り、オールデンの作りは控えめに言って雑です。今回届いたものも、正直他のブランドだったらリジェクト品としてファクトリーショップで売られなければならないレベルの商品だと思います。

コードバン自体も一部では「革の宝石」と言ったりするようですけど、われわれ日本人からすれば、「ランドセルの革」なわけです(実際にコードバンを使ったものを持っていたかどうかはともかく、コードバンの光沢を模したものが多くはなかったでしょうか)。あの独特の光沢が本当に高いお金をだしてまで手に入れたいと思うものかどうか、子供のころを思い出すのも一興かもしれません。もちろん、本物のコードバンの輝きは特別なのだ、と思うこともできますが、今、オールデンのこの靴を前にして、筆者が思うのは……

カーフの方がいいや、ということでした。

これでしめると悲しいので、最後に一言。コードバンの靴は確かに一足は持っていると知識も広がるし、何より実際に所有してじっくり手に触れて眺めて足に入れて歩いてみるという過程はお店で短時間試着するよりも深い「モノ」との関係を作り出します。なので、買ったことは後悔していません。

エイジングしていってどうなるか。楽しみでもあります。でもそれはホーウィンのコードバンによるところが大きいでしょう。コードバンということを抜きにしてオールデンのファンになれるかというと、私はなれないなというのが正直なところです。多分今度コードバンの靴を買う時は違うブランドのものを選ぶと思います。

 

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オランダ在住。オランダの文化や自然、その他ファッションについてなど諸々発信していきます。