ある朝、アルファロメオが目覚めると

アルファのデザイン製とそれなりのコストパフォーマンスを維持しながら、スポーティさも楽しめる軽快なイタリア車。仕事や家庭でふと余裕の出た大人が、ちょっと挑戦して乗ってみたくなるような車をアルファは作ってきました。

しかしある朝アルファロメオが目覚めると、センチメンタルな洒脱感漂うイタリアンダンディであった彼は、6歳児になっていたのです。

僕は超クールでバカ速くて目立つ車を作りたかったんだ!思い出した!

そうして突如としてアルファロメオのラインナップに登場したのがこのAlfa Romeo 4cなのです。(世界がゴルフバッグをいくつ詰めるか競争している時代に、プールバッグしか乗らない車をアルファロメオが作るなんて、誰が想像していたでしょうか。)

今回は1泊2日でこの車を試乗してきましたので、レビューさせていただきましょう。

この車は小さな ラ・フェラーリだ

イギリスBBCの車番組であるTOP GEAR トップギア、およびAMAZON PRIME アマゾンプライムのGRAND TOUR グランドツアーで有名なジェレミー・クラークソン。

彼はもともとAlfa Romeo アルファロメオ推しでアルファロメオ ジュリア クアトロフォルマッジ(4種のチーズピザ)と並んで4cを絶賛していますが、この車を「小さなフェラーリどころか、小さなラ フェラーリ」だと表現しました。

私は残念ながらラ フェラーリを運転したことがないので、「エンジンのついたショッピングカート」と表現しておきましょう。

このアルファロメオ 4Cで日本の渋滞した道を走っているときの気持ちはまさに、コストコのアホほど混雑した通路を250馬力のエンジンがついたショッピングカートで走るような気分なのです。

しかし大げさではなく、この車はフェラーリをぎゅっと凝縮して作り上げた小さなスーパーカーです。800万円のプアマンズ(貧しい人のための)フェラーリと呼んでも差し支えないでしょう。

パワステはなく、地べたに座るようなシートポジションで、真後ろからエンジンの轟音を聴きながら運転しているとき。誰もそれがあの、手頃なちょいワルセダンを作っていたアルファロメオの車であるとは思わないはずです。

一体どのようにして車検に通るのか摩訶不思議なノーマルマフラーは、ほぼ直管のような爆音です。もちろんバイパス側道の高架下で窓を全開にして楽しむときは、どんなにシリアスな表情を維持しようとしても笑みが漏れてしまうでしょう。

(上)高架下をアルファロメオ4Cで走っているときの表情の例

この爆音については4気筒エンジンなので、まるきりマフラー交換をした走り屋国産車に近い音ですが、それでもこの車のDCT特有の音がするので、満足感がありますね。

アルファロメオ 4Cは早いのか?

さて、漠然と小さなフェラーリ扱いをされているこの車ですが、実際には早いのでしょうか。

答えはYESでしょう。アクセルを一気に開けると、過給機が離陸する飛行機ばりにヒュイーンと叫ぶ。一瞬ターボとミッションのラグがあってから、まるで弓から放たれた矢のように加速する。

だいたい旧来のイタリア車だったら、「これ以上踏むときっと何かしらのパーツに負荷がかかるだろうから、この程度にしておこう」と感覚的に戻してしまうアクセルも、このアルファロメオ 4Cだと一切不安がありません。最新のマシンの安心感があるのです。

それもそのはず、エンジンはあの可愛らしいアルファロメオ ジュリエッタと同じものなのです。

ゼロから100km/hまでの加速は4.4秒。私が普段乗っているマセラティ クーペが4.9秒、クアトロポルテが5.1秒であることを考えると、一割増し以上の加速です。

NAのだんだんと上り詰めていく加速に慣れていると、アルファロメオ 4Cの強烈なターボと極端に軽量なボディが生み出す飛ぶような加速は、なんとも言えない新しさがあります。

まさにフェラーリ488を運転したときの感覚を、そのまま縮小したようなドライブフィーリングです。

しかしなんといってもこの車の特筆すべきは、コーナリング性能でしょう。ハンドルを切った方向に切っただけ動いていく感覚は50ccのカートのよう。あとから修正するような雑なラインを車は嫌がり、十分な荷重移動と一発で決めるハンドルの切り込みが車を思った方向に向けてくれます。

1日目は雨の中の走行でかなりトリッキーな状況でしたが、カートに乗り慣れて入れば問題ないかもしれません。

どこまでブレーキを踏んでよいのか、どこまでアクセルを開けて良いのか。それを判断できる人なら、MRのエンジンレイアウトにこの短いホイールベースでも、楽しさこそ感じても危険は感じません。

見た目から想像されるほど危うさは感じず、むしろ4.2のマセラティの方が暴れるような感覚が強いですね。アルファロメオ 4cは常に、操作した通りに動きます。

タイムを計測したわけではないので何に比べてどのくらい早いのかはわかりませんが、車として早さを感じられて楽しいことは間違いないでしょう。

むしろ日々使いやすいアルファロメオかも?

アルファロメオといえば、なんとなくツッコミどころ満載で色々なところが頼りないイメージでしょう。事実うちのアルファGTに関しては、なんとなくふにゃっとしたギアセレクターに始まり、実に様々な部分に頼りなさを感じます。

しかしこのアルファロメオ4Cに関しては、むしろハイテクすぎるくらいです。

カーナビはそれなりに使いやすく、iPhoneを同期して音楽を楽しむこともでき、スピーカーの音もそこそこ悪くありません。

またパークセンサーもついており、車のサイズも小さいので、形からは想像できないほど取り回しが良い車です。

しっかりワイパーも動きますし、ウインカーが出なくなることも、窓が上がらなくなることも、バックギアに入らなくなることもありません。(アルファロメオなのにどうして?)

一番気を使いそうに見える下回りの車高の低さですが、これも一般的なスポーツカー程度の気遣いで十分です。フロントリフトがついていないと宙に浮いた亀のように立ち往生してしまうフェラーリやランボルギーニのような危なさはないですね。

アルファロメオ 4Cの弱点は?

個人的にアルファロメオ 4Cに乗っていて感じた弱点は、アルファロメオ4Cであるがゆえに諦められるところばかりです。

例えば振動と騒音。特にエンジンは四気筒のある意味普通のエンジンをチューニングしたものなので、もともと振動は少なくありません。さらにそれがシートのすぐ後ろに搭載されていて、車重も軽いので車はドコドコと振動しています。

例の素晴らしい爆音も2〜3時間も乗りつづけた後は、まるきり耳がバカになり、ついに奥さんの車に対する不平不満も近隣住民の苦情も聞こえなくなります。

とはいえこういったことになんのデメリットがあるのか?

これが嫌であるならば、アルファロメオ 4Cに乗る必要がないのです。普段ある程度実用性の高い車に乗っていて、なんとなく物足りなさを感じる。

そんな人が休日に思い切り楽しむために乗る車ですから、このくらいの極端さがあった方が良いでしょう。普段デスクワークしている人が筋トレをしたときに近い快感を得られるでしょう。

あと気になるのは大きく跨いで乗り込むシートポジションですが、これも楽しみのうちに入るでしょう。

そしてこの小さなトランクスペース。この車で3泊4日の旅行にいかない限り、1泊までなら問題ないはずです。御殿場アウトレットに愛人を連れていってブランド品を爆買いさせる人は、アルファロメオ 4CではなくメルセデンスベンツのSクラスを買いましょう。

どうしても気に入らなかった点は二つ。

一つは夜明るすぎてデザインも子どもっぽい液晶のメーターパネルです。ここまでデジタルならいっそ、携帯電話とリンクさせてアプリで画面デザインを変えられるようにしてほしいですね。

もう一つはセレスピードのシフトパドルがコラム式でないこと。しかも押した感じも、アルファGTつまり147とそっくりです。

スーパーカーさながらの加速をしながら「ポチ」「ポチ」とおもちゃのようなパドルでシフトチェンジしていくのはなんとも違和感があるので、ぜひとももう少し改善してほしいところです。またハンドルと一緒にシフトが回るので、どっちがUPでどっちがDOWNか深刻にわからないシチュエーションが何度か発生しました。

DCTのオートマモードが優秀なのであえてパドルシフトを使わなくても良いよということなのかもしれません。

アルファロメオ 4Cの燃費

さて、これはどうでも良いことかもしれませんが、逆の意味で驚いたのでこれについても書いておきましょう。アルファロメオ 4Cの燃費の良さは、おそらくアルファロメオの歴史の中でも特筆すべきものです。

リッターどのくらい走ったでしょうか。

おそらく10km/lくらいの感覚です。

だいたいマセラティの場合、笑みがこぼれるような楽しいドライブを20〜30分した後に燃料計を見るとだいたい3分1くらいは減っているものです。

(上)楽しいドライブ後に給油するマセラティオーナーの表情の例

しかしアルファロメオ4cはこの早さと楽しさでありながら、走れど走れど一向にガソリンが減っていかないのですね。

この辺りはさすが最近のターボ車です。ガソリンタンクの容量は40Lと大きくありませんが、不自由に思うことはないでしょう。

そもそも20Lを使い切る頃には、腰がやられているはずです。

Alfa Romeo 4c 買うべきか?

さて、最近の車とは思えないほどの楽しさがありながら、最新の車に近い安心感を誇るアルファロメオ 4c。1000万円を切る価格設定で、中古であれば今600万円〜低走行車を探すことができます。

この車は買いなのか?

見た目が好きで何よりも早くてスポーティな乗り心地が好きなら、買って後悔することは絶対ないはずです。ネガティブなポイントが殆どなく、全てがシンプルながら高い次元でまとまった本当に良い車なのです。

とても楽しいし、この楽しさから考えたら驚くほど現実的な車です。

個人的には8Cのエクステリアにもう少し近いデザインであれば、欲しくなってしまったことでしょう。どちらかというとサーキットのレンタカーにあったら毎回借りて走りたい車です。

気になる人は一度乗っていつも自分が走るような道を走ってみると、自分に必要な車かどうかがすぐにわかります。何しろ、極端な車なのです。

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後天的イタリア人。 メンズファッション、車、オペラ等について執筆する兼業ライターです。 本業は田舎の洋服店。