皆様いかがお過ごしでしょうか、ライター高橋です。後1ヶ月と少しで2020年も終わると思うと何だか焦燥感に苛まれる日々が続いております。しかし一方で季節が進むとともに重衣料の楽しみが増え、出かける度にコーディネートを楽しむ毎日です。

Rinascimento読者の皆様はイギリスやイタリアのクラシックスタイルを嗜まれている方が非常に多いかと思いますが、私もその例に漏れず細々と勉強中であります。幼少期からピアノを人前で演奏する際にはスーツを着てタイドアップをしていたことから、自然とそういったスタイルに親和性を感じるようになった事がきっかけです。また、はじめは近所のショッピングモールの物からセレクトショップのオリジナル、そして今や本格的なイタリアブランドへとズルズルと沼に浸かってしまっています。そんな私ですが、最近特に愛用しているのがCARUSOのジャケットになります。

CARUSOの特徴とジャケットのディティール

ご存知の通りCARUSOはナポリ出身のラファエル・カルーゾ氏が立ち上げた、パルマを本拠地とするファクトリーです。数々のラグジュアリーメゾンのOEMを請け負って培ったセンスと、サルト出身という経緯から高い技術力を有するブランドです。

このブランドの素晴らしいところは何と言ってもそのコストパフォーマンスの高さにあるでしょう。ハンドとマシンをバランスよく使い分けて生産をしているため生産のスピードとクオリティのバランスが非常に良く、比較的リーズナブルな価格で着用時には素晴らしい体験を得られます。

フロント

こちらのジャケットは織り柄のある少しざらっとした質感のネイビーの生地を用いた3つボタン段返りのオーソドックスなジャケットになっています。非常に綺麗なラペルロールと9cmのラペル幅が重厚感と優雅さをもたらしてくれます。フロントダーツがありますがウェストのシェイプはそこまできつくなく、着用時は比較的リラックスしたシルエットとなります。マニカ・カミーチャによる袖付もその要素の一つでしょう。

袖付け部分

同じくらいの価格帯のブランドとしてLARDINIやDe Petrillo、TAGLIATOREなどもあげられるかと思いますが、個人的にはCARUSOがイチオシです。理由はいくつかありますが、何と言ってもフィッティングにあります。

私共演奏家は演奏の際に燕尾服やタキシードを着る機会もあり、一般の方々と比べてフォーマルに触れる機会は非常に多いかとは思いますが、一方で普段の生活においてスーツを着てタイドアップをするといった事が非常に少ないです。もちろん会社勤めでないためスーツの着用を義務付けられていないというのもありますが、何よりも大きな点は演奏の際にそういったフォーマルなスタイルは非常に動きづらく、ストレスになる事が多いからだと考えます。楽器演奏は一見座って行っているので窮屈さという点に関してあまり問題ないようにも感じますが、実際は微細な動き一つ一つをコントロールするある種の全身運動でもあります。

もちろんTAGLIATOREなども体のラインを美しく見せるフィッティングといった点においては優れていると思います。しかし一方でプロポーションを美しく見せるために体に沿っている部分が、演奏時のアクロバティックな動きには少し窮屈に感じてしまいます。

私の体型の問題もあるかとは思いますがCARUSOはその点それらのブランドに比べ少しリラックスしたフィット感を感じられます。もちろん体のラインには沿っているのですが、演奏時にストレスを感じる事がなく、それでいて雰囲気のある風合いを楽しむ事ができる為大変気に入っております。

コーディネート例

コーディネートの例をあげておきます。こちらはかなり固めのコーディネートになります。ネイビーのジャケットに合わせて皆様ご存知BARBAの白と水色のストライプのタブカラーシャツにジャケットの質感に合わせた質感のBreuerの小紋柄のネクタイ、オフホワイトのチーフを合わせています。

もう少しカジュアルに合わせるならばタートルネックを挟むのも良いかと思います。こちらはエディフィスオリジナルのダークグリーンのハイゲージニットに、グリーンを拾った少し主張の強い柄のチーフをさしています。ネイビーや白のタートルネックを合わせてもよかったのですが、グリーンカラーの持つ知的な雰囲気も大変相性が良いとおもいます。また男性が取り入れやすい色の一つでもあるかと思うのでおすすめです。

どちらもパンツはウールのグレーの少しリラックスしたシルエットのトラウザーズが好ましいかと思います。靴も良くある茶靴ではなくどちらかというとChurch’sやCrockett & Jonesのような重厚感のある黒の英国靴、もしくはブラックスエードのベルジャンシューズのような華奢でエレガントな物を合わせるのも良いかもしれません。

どちらにせよ今の気分的に少し英国テイストを取り入れながらコーディネートするのが良いかと思います。イタリア色が非常に強いジャケットだとそれは少しアンバランスになってしまうかもしれませんが、このカルーゾの持つミラノほど都会的でもなく、ナポリほどサルト臭のような癖もない中庸さがミックススタイルに馴染みが良い理由なのかもしれません。もしご興味もたれる方がいらっしゃれば、ぜひお試しになられてはいかがでしょうか?

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ピアニスト・音楽家 主にクラシック音楽に関する事柄を執筆いたします。