コンビニワインは買ってはいけない?本当に美味しいのか

はっしー

「3日目のワインが一番美味しい」といった類の入門ワイン本を立ち読みしたら、コンビニワインがお勧めされていました。コンビニワインを買うことは10年に1度もありませんが、深夜無性にキンキンに冷えた白ワインが飲みたくてコンビニで買ってみたのです!
そこで今日はその時の銘柄と共にコンビニワインについて考えてみます。

格安ワインの代償とは?

コンビニのワインは何故あんなにも安いのか疑問に思ったことはありませんか。上記の写真でも分かりますが、セブンイレブンのヨセミテロード・シャルドネは750mlで税込627円、税抜きでは570円という信じられない安さです。
税関の公式サイトから酒税を確認すると「醸造酒類ワイン(果実酒) 15%又は125円/Lのうちいずれか低い税率。ただしその税率が67円/Lを下回る場合は67円/L。(注2)」とあり、厳密には別の計算があるかもしれませんが、これで計算した場合は酒税が85円。この時点で既に485円です。コンビニの仕入価格が約70%、そこから国内の配送コスト、海上輸送コスト、商社の利益、倉庫の費用、ワインの瓶代など入れると、製造価格はどうなるでしょうか。

この格安ワインの実態について神保町の書店を4~5件回ってみたのですが、どれも「フランスのボルドーの基本」、「アメリカのワインはすごい!」、「日本のワイン革新的な進化」など本格的に作られているワインの話しか出てきません。
ボルドーの格付けシャトーよりも遥かに流通している、国内で大きな消費量を誇るコンビニワイン(大手スーパーも然り)については言及されていないのです。RTD(レディ・トゥ・ドリンク)としてコンビニでキャップを捻れば飲めれるワインについては、100冊以上見たうち1冊も語られていないのです。しかし以前こんな話を聞きかじった事があります。

とある酒販店で働くソムリエの話によると、「(こういった格安)ワインの中には濃縮果汁を輸送してきて、国内で希釈、アルコール添加、ボトリングしているメーカーもある」と言うのです。確かに大量に流通する極めて単価の低いワインであれば、濃縮還元液の状態で輸入してきて、国内で希釈・ボトリングすれば瓶の重さや輸送コストを削減できます。
濃縮還元液からワインを作ることは日本では許可されているのです。格安のワインだと、樽のニオイがするようなシャルドネでも、ステンレスタンクから一度も樽に移さずに砕いた木のチップを規定の時間ワインに付けて香りを移している事もあるそうです。フランスにあるような厳しいワイン法は日本には存在せず、合法であればOKの無法地帯だと言います。

濃縮果汁の還元、輸入マストとバルクワインの闇

書店では収穫がありませんでしたが、J-STAGE等の論文検索サイトで興味深い資料が見つかりました。
金成㙾「日本におけるワイン産業の現状と課題 : 山梨県勝沼町の中堅ワイン・メーカーの事例を中心に」『農業市場研究』14巻1号、日本農業市場学会、2005年、49-60頁にはこうあります。

94年メルシャンの500円ワイン(ボン・マルシェ)の市販をさきがけとする低価格ワインの出現、96年から、チリ、オー ストラリアなど南半球の銘醸ワイン(新世界ワイン)が家庭用・業務用市場に浸透したこと、97、98年の赤ワインブーム、などである。2000年現在、日本のワイン消費量は年間255,000kLで、そのうち国産が1O2,000kL(40%)、輸入品が153,000kL(60%)である。(中略)
販売価格帯からすると、全体シェアの60%以上が1000円以下の製品に占められており、最近では、300円台のワインも登場している。1500円台ワインは一貫して安定傾向にあるので対し、高級品の場合は、低迷が続いている。(中略)
ここで留意すべき点は、国産ワイン(Made in Japa)の意味である。国産ワインとは「日本国内」でビン詰めされたものとの意味で、国産ぶどうから醸造された純粋な国産ワインのみならず、バルク状態で輸入したワイン(bulk wine)とブレンドしたもの、輸入マスト(grape must:発酵以前の濃縮果汁)を日本国内で発酵させ醸造したワインまでを含む。なお、国産ワインは輸入マストやバルクワインへの依存度が非常に高いため、純粋な国産ワインは全体ワイン供給量の約10〜15%程度とされている。(中略)
大手ワイン・メーカー日本のワイン・メーカーは約300社に達するが、大手5社の市場シェアが80%を超えるなど非 常に集中的な市場構造となっている。日本におけるワイン産業の現状と課題一山梨県勝沼町の中堅ワイン・メーカーの事例を中心に一 著者/金成嬋氏より一部引用

つまり、コンビニワインや安いワインの中には、海外から輸入された「バルクワイン」や「輸入マスト」が用いられている可能性が高いということです。更に2000年当時の情報では、国内ワインメーカー約300社の中の大手5社が市場シェアの80%を握っているとも書かれています。輸入マスト(Grape Mustは発酵以前の濃縮果汁)と言った表現から見ても、先程の酒販店で働いているソムリエから聞いた情報が間違っているとも言い切れません。

もう一つ濃縮還元に対して興味深い文章が見つかりました。横塚弘毅「ワイン製造(その6)」、『日本醸造協会誌』95巻4号、日本醸造協会、2000年、235-243頁の中から一部を抜粋します。

スタイリッシュワイン製造各論 スタイリッシュワインには、色々な意味がある。洗練された、ファッショナブルな、おしゃれな、エレガントな、あるいはトレンディーなワインがこれに含まれるであろう。ここでは、世界で、日本で、最近10年間に話題となった、いくつかのトレンディーなテーブルワインの製造の基本技術を述べたい。
1.濃緯果汁を原料としたワイン
1-3 濃縮果汁の項で述べたので、ここでは濃縮果汁からのテーブルワインの製造法を記す。濃縮果汁はプラスナック容器、あるいは金属製缶の中に入った形で販売されている。プラスチック容器よりも金属製缶のほうが貯蔵性はよい。 プラスチック製容器へ空気中の酸索が入り、それが果汁中に拡散し、果汁成分を酸化するからである。濃縮果汁の原料として、最高品質のブドウを使うことはない。濃縮果汁をつくるために約80%の水分を除かねばならず果汁は減圧加熱濃縮 されているので、これから上級クラスのワインを製造するのは難しい。濃縮果汁は、その製造・貯蔵中に急速に品質が劣化するので、冷蔵し、製造後3ヶ月以内のものを使用するのが望ましい。果汁製造者は製造年月日はつけるであろうが、使ったブドウ品種やその収穫地、収穫日、貯蔵法などに関する情報を十分にユーザーに知らせたがらない。業者は果汁を冷蔵するほどの余裕がなく、製造後1年以上の果汁を販売することも珍しくない。このような濃縮果汁の欠点にもかかわ らず、多くの国で濃縮果汁が使われている。一般に、濃縮果汁からつくったワインは酸が低く、口当たりがよい。
1-1 白ワイン
濃縮中、ブドウアロマの多くは失われるので、デリケートでフルーティーな白ワインは期待できない。多くの場合、濃縮果汁からベークドあるいはカラメル様(例えば、高温での濃縮中に糖が2-ヒドロキシメチルフルフラールに変わる)のフレーバーをもつワインができる。ラブルスカアロマを隠すので、狐臭をもつアメリカ系ブドウから濃縮果汁をつくるのは加熱濃縮はかえって都合がよく、またニュートラルなフレーバーをもつブドウから作るシェリー、ベルモット、ブレンド用並級ワインの原料としても差し支えない。<シリーズ・醸造の醸造技術>ワイン製造(その6)横塚弘毅氏より一部抜粋

他にも国内のワイン消費や、流通と消費の流れ、濃縮還元について様々な論文があるので検索してみて下さい。これらの情報から、筆者が強引にまとめてみると、格安ワインの中には濃縮還元ジュースから作られたものもあり、それらのブドウの素性は伏せられる事が多い。更には製造から時間が経ったものも存在する。また製法上、ブドウ由来のアロマ(香り)が無くなる。しかし日本に来る前、輸入前の加工時点での亜硫酸塩添加や、香料などの添加は日本でボトリングした時の表示義務は無い。
これらは大手メーカーでは公開されておらず憶測の粋を出ませんが、複数の情報を辿った結果、”そういった可能性がある”という事が分かりました。完全な裏付けが取れていないので、コンビニで売っているワインが絶対に”そうである”とは言い切りません。

実際に飲んでみた感想は

確かに白ワインの特徴をよく掴んだ味わいになっています。しかしフレッシュ感が失われています。温度を下げて氷でガンガン割らないと飲めるようになりません。
果実由来の芳醇な香りは失われて、その代わりに香料のようなエッセンスのようなものを感じます。果実由来の芳醇な香りとは、例えばグレープフルーツの果実を手で割った時に弾けてくる香り、または花屋さんの生花切り花コーナーを横切った時のような香りです。コンビニワインには”生っぽさ”という香りがありません。温度が高いと強いアルコール臭を感じます。そして翌朝は、大半を残して2~3杯も飲んでいないにも関わらず頭痛で起きたわけです。ネット上で調べてみても「醸造アルコールは思い込みだ派」と「いや実際に特定の銘柄で頭痛が起きるよ派」と分かれて見かけますが、「実際に日本酒でも特定の銘柄だけ頭痛が起きる」「安いワインで気持ち悪くなったり翌朝まで頭痛が起きる」「醸造アルコールだけアレルギーが出る」と訴える人が一定数以上実在する訳なので、筆者は本当に存在するのだと思います。

自然派ワインが好きな人の中には、強烈に亜硫酸塩を反対したり、農薬を絶対に許さないビオディナミ、ヴァン・ナチュール信者が存在しますが、私は適量であれば亜硫酸塩の添加や農薬は使われていても問題ないと思っています。実際にフランス・ボルドーの5大シャトーでも、今でこそ有機農法を一部に採用していますが、農薬を使っている所ばかりなのです。

コンビニワインは買ってはいけないのか?

今回飲んだ2本は明らかに美味しいとは言えないものでしたが、写真のように1000円以上するコンビニ高価格帯には美味しいワインがあるかもしれません。理由は新大陸で千円以上の商品もあるからです。

例えば徳岡扱いの「アロモ カルメネール プライベート リザーブ」1,350円(税別)、コンビニには売っていませんが価格は近いです。宣伝文にこうあります。
生産地域:チリ 中央部 セントラルヴァレー マウレ ヴァレー 品種:カルメネール
収穫は手摘み、フレンチオークとアメリカンオークを使用して6-8ヶ月間熟成。スパイスやペッパー、黒系果実のアロマにビターチョコレートの風味が加わります。滑らかなタンニン、バランスのとれたフルボディ。
このように、わずか1,350円(税別)であっても、産地が細かく指定されて、ブドウは手摘み、樽の種類と熟成の期間を明記している商品もあります。実際に5~6年前に、このアロモの高級価格帯(それでも2千円程度)を10本以上飲んで居ましたが、どれも香り高く、カルメネール由来のぶどうの濃い味わい、干しぶどうのような甘さが楽しめるコスパ良いワインでした。

コンビニワインの全てが悪いという訳でなく、中にはこのような本格的なワインが存在するかもしれません。しかし余りに安い価格帯(300~600円)のものは、先ほど上げた醸造方法に問題があるケースもありますので避けるのが懸命と言えそうです。一回に飲む量が少ない人は2~3千円の本格的なワインを購入して、開栓後すぐにジップロックなどで空気を出し真空にして、冷蔵保存すれば美味しいワインが数日に渡って、少ない劣化で飲むことができます。
安すぎるワインを飲んで後悔するよりも、少し高級な品質の確かなものを選ぶ方が満足度が高いと思います。


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