オランダのスーパーからみる生肉文化

まだらの牛

日本にいる友人とオンライン飲みをしていたところ、私が食べているつまみが相手の目にとまりました。

「え、これ? フィレアメリカンだけど」私はそう答えました。

「なにフィレアメリカンって? 常識じゃないんだけど。説明してくんない」

ということで、以下はオランダの最大手スーパーであるアルバートハイン(Albert Heijn)からみたオランダの生肉文化についてのご紹介です。アルバートハインはオランダのスーパーの代名詞的な存在ですので、このスーパーを通じて一般的なオランダの食卓を覗くことができると言えるでしょう。

フィレアメリカン(filet americain)

説明しましょう。フィレアメリカン(filet americain)とは脂肪分の少ない牛の生肉のミンチを専用のソースと合わせたものです。ソースはマヨネーズにパプリカやウスターソースの混じったものが合わさっています。タルタルの一変種と考えていいようです。

どうしてこの料理にアメリカの名前が絡んで来るのか定かではありません。1895年にアムステルダムのホテル、Het Americain HotelのレストランBar Americainでこの料理が発明されたから、といった説もありますが、確証はないようです。

この料理はスーパーで普通に売っています。なんだろう、これと思い、試しに買ってみたら美味かったので、スーパーに行くたびについつい買ってしまいます。値段は150gで2.5ユーロほど。フィレアメリカンだけでも玉ねぎや胡椒、卵がまぶされたりしているものや、ビオ(bio)のバージョンなど、バリエーションがあることからも、この商品がオランダで広く愛されていることが分かります。

こちらの動画でフィレアメリカンの製法について詳しく解説されています。英語の字幕付きです。この動画では自分たちが作っている新鮮なフィレアメリカンは粒粒が残っていて、スーパーで売っているような滑らかすぎるものとは違うと言われています。すみません、今回ここでご紹介するのに使ったものは前述したように、すべてオランダの最大手のスーパー、アルバートハイン(Albert Heijn)で買いました。肉屋のものの方がそりゃ美味しいでしょうが、スーパーで気軽にこれだけの生肉料理が買えるということをお伝えしたかったのです。

パンやクラッカーに塗るスプレッドとして使うのが一般的です。しかし筆者は下の写真のようにおつまみとしてただ並べてしまうことが多いです。赤ワインと非常に良く合います。

上の写真では左がフィレアメリカン。右はリッケポト(likkepot)と呼ばれる一種のレバーソーセージです。ですので加熱されています。しかし食感はふんわりと柔らかく、生のような感覚です。レバーソーセージにマヨネーズやトマトケチャップが混ざっていると定義した情報もありますが、ここで使ったアルバートハインの成分表を見ても、マヨネーズやトマトケチャップはなく。これとこれとこの材料を使っていなければ、リッケポトじゃない!といった厳格な決まりはなさそうです。スーパーではフィレアメリカンと同じ冷蔵ケースに入れて売られていることが多いです。

オッセンヴォルスト(ossenworst)とビーフステュックヴォルスト(biefstukworst)

基礎知識としてヴォルスト(worst)というのはソーセージのことです。ドイツ語のWurstととてもよく似ていますね。

さて、この上の二つのソーセージ、どちらも牛生肉です。

オッセンヴォルストは17世紀からあるアムステルダム発祥とされる牛のソーセージ。名前にos(英語でox)とあるように、昔は去勢された雄牛の肉から作られていました。今は別にそれにはこだわらず、牛肉一般が原材料です。また、伝統的には燻製にされていたそうですが、今は生で作られています。

生の牛肉にオランダ領東インドから持ち帰った香辛料(胡椒、チョウジ、ナツメグなど)で味付けされています。

味や食感は固いタルタル、柔らかいサラミといったところでしょうか。味付けは肉屋などによって違うでしょうが、上のアルバートハインで買ったものはレモンの風味が強く感じられました。

ビーフステュックヴォルストもオッセンヴォルストと似たような生牛肉のソーセージですが、後者より脂肪分が少ないです。しかしそれがこのソーセージの定義かというと心もとなく、調べてもこのソーセージについては確かな情報が出てこないのです。オッセンヴォルストがユダヤの食文化コーシャの中で生まれたという説があり、したがってオッセンヴォルストはコーシャの牛肉だが、ビーフステュックヴォルストは違うといった噂もネット上で探していて見つけましたが、証拠がなく疑わしい噂です。また、biefstukというのはオランダ語でステーキ肉のことを指しますが、この言葉との関係もよく分かりません。タルタルステーキをソーセージにしたということなのでしょうか。何か分かれば追記します。

少なくとも、一般にスーパーで見かけるこの二つを食べ比べて見た限りでは、ビーフステュックの方は見た目通り、脂肪分が少ないという程度の味の違いでした。

上のふたつ、ケーシングは腸ではなくプラスチックです。肉屋などでどうなのかはまた機会があれば書きたいと思いますが、スーパーで簡単に手に入るものとしてはアルバートハイン以外を覗いてみても、プラスチックのケーシングが一般的です。

食べ方ですが、サンドウィッチにして食べるのが一般的です。そのままサラミ感覚でつまんでももちろん美味しいです。

アルバートハインではなくHoogvlietというこれまた大手のスーパーのオッセンヴォルストとビーフステュックヴォルスト

ケーシング入りで売られていることが多いですが、切られた形でも売っています。旅行でオランダを訪れて、ホテルで晩酌でもしたいときに、試してみてください。

タルタル(tartaar)とカーフスフィレアメリカン(kalfsfilet americain)

タルタルは言わずとしれたタルタルです。このアルバートハインのものは紫っぽいんですが、着色料のせいでしょう。実は他にもスーパーで簡単に手に入るタルタルがあるのですが(それは後日機会があればご紹介しますが)、そちらと比べてこちらは水が添加されています。成分表記を見ると73%しか牛肉が使われておらず、残りは水や油などが占めているので、こちらは特にスプレッド用のタルタルという位置づけなのかもしれません。

玉ねぎ付きで売っています。

カーフスフィレアメリカンというのは、さきほどのフィレアメリカンのカーフ(仔牛)バージョンです。普通のフィレアメリカンより、ソースの存在感が強くて、味はツナマヨに似ています。

カナッペにするのがいいのでは?

ここまで書いてきて、上でご紹介したものは全てカナッペにするのがお洒落で美味しい食べ方だろうということに今更ながら思い当たりました。賢い読者の皆さんは、私のようにそのまま食べるなどという野蛮なことはせず、オランに行った際は是非、ホテルで夜晩酌にカナッペにして食べてみてください。オランダのレストランは高く、また郷土料理といったものもあまり望めないので、食に関してはスーパーで済ませてしまうというのも一つの手ですから。オランダの生肉文化、調べていくうちに中々奥深く、由来や定義などをはっきりさせるのが難しいことに気付いたので、もう少し勉強してみます。

 

参考資料(本文中にリンクがあるもの以外)

フィレアメリカンについて:

https://nl.wikipedia.org/wiki/Filet_americain

https://www.thedutchtable.com/2011/04/filet-americain.html

オッセンヴォルストについて:

https://www.culy.nl/inspiratie/ossenworst-amsterdamse-klassieker/

https://en.wikipedia.org/wiki/Ossenworst

https://mens-en-gezondheid.infonu.nl/gezonde-voeding/173487-is-ossenworst-gezond.html

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