はっしーです、こんばんは。
久しぶりにフォションの紅茶を手に入れたので、同時に5種類テイスティングしてみました。

フォションの缶パッケージのデザイン変更

缶がリニューアルして角丸長方形の缶から円柱形の筒に変更されました。ラベルも上白紙のようなマット系の紙に箔押し加工を施したもので、以前のようなフルカラーのスクリーン印刷ではなくなりました。
単にデザイン変更という時代の流れなのか、農園ダージリンなど企画モノの版代が高すぎて採算が取れないのかは分かりませんが、随分とあっさりとしているなという印象を受けます。下の写真は以前のパッケージですが、2012年のミム農園しか使えないので、版代が無駄になってしまうのです。懐古厨になってしまいますが、この頃のダージリンは凄かったです!

旧パッケージ

私を含め紅茶好きというのは面倒なもので、些細な違いを引き合いに出して、ああだこうだ議論するのが常です。ミルクの淹れ方一つとっても大騒ぎで、カップに先にミルクを入れてから紅茶を注ぐミルクインファースト派(Milk in first)と、先に紅茶を入れ後からミルクを注ぐミルクインアフター派(Milk in after)で派閥が生まれるほどです。
これが楽しみでもあるのですが、クロード・モネの『日傘の女(左向き)』と『戸外の人物習作(左向き)』のシュザンヌ・オシュデの表情の違いについて語るのと同じように、どちらが正しいだとか間違っているだとか決めること自体が意味のない、それでいて小さな差の好き嫌いが分かれるものです。

フォションも昔から「四角いゴールド缶(S&B扱い)は味が悪い」「輸入者が高島屋のものが美味しい」など、輸入元(インポーター)や形状によって味が違うと界隈で話題になっていますが、やはり同一のパッケージでも年々少しずつ味が異なります。今回の比較では私の過去の記憶から引っ張り出してくるので、主観による曖昧な部分もありますが、昔のフォションとの比較も行ってみたいと思います。

UN MATIN AU LOUVRE – マタン・オ・ルーブル

アーモンドや菩薩樹の香りを思わせるまろやかな紅茶は、朝の目覚めの紅茶としてどうぞ

少なくとも20缶以上は飲んでいたマタン・オ・ルーブルです。何故そんなに飲んだかというと、爽やかな香りで飲みやすいというのもありますが、御殿場プレミアム・アウトレットのフォションで70%OFFの360円といった信じられない安さの時期があったので5缶、10缶単位で買いだめしていたからです。これを無限に飲みながら大人本を書いていたものです。

さて、肝心の茶葉ですが香りが少し落ちた?茶葉の原産国はインドネシア、インド、スリランカのBOP(ブロークン・オレンジ・ペコー)ですが、均一ではなくややムラがあります。菩薩樹の香りは実際に嗅いだことはありませんが、樹木の乾燥した皮のようなニュアンスを感じさせます。

抽出してみるとタンニンが昔と比べて落ち着き、コクも抑え気味になっています。以前はもっと攻撃的な強烈な味でした。
今は飲みやすくまろやかで、リプトン系の渋みと香りを感じます。
茶葉を減らして薄めに抽出したり、アイスにしても美味しく、夏でも爽やかに楽しめる茶葉です。

着香はされておらず茶葉だけの香りなので、男性にもお勧めできます。抽出時間は短めが良いです。

MORNING – モーニング

森林を思わせる香りとスパイシーさを兼ね備えた、バランスのとれた紅茶。ミルクを少々加えてもおいしく頂けます。

茶葉の原産国はスリランカとインドです。スリランカ(つまりセイロン)の産地はおそらくディンプラです。ウバのような強い清涼感はありませんが、ルフナのような発酵臭もなく、良い意味で没個性的なナチュラルな印象です。
飲んでみると後からアッサムのコクのある旨味が出てきます。強いタンニンが出ているのでストレートではなくミルクを入れることを前提としているようです。これだけコクが強いとジャージー牛乳などの、リッチなクリーム感が効いているミルクを足しても負けることがありません。
先ほどのマタン・オ・ルーブルと異なり、薄くしたりアイスにするとバランスが崩れやすいので注意が必要です。タンニンが強いので牛乳を足してアイスミルクなら美味しく飲めそうです。

LA POMME – ラ・ポム(アップルティー)

細かいセイロン茶にアップルの香りを加えました。1972年以来続くフォション定番の紅茶は、午後のデザートのお供にどうぞ。

残念ながら以前のラ・プムと比べると香料がやや落ちています。フレーバードティーは日本語にすると着香茶といって差し支えないはずですが、いくつか種類があります。アップル香料の中にも人工的に合成されたものから、実際に林檎から抽出した精油を利用したものまで様々な種類があります。またそれだけでなくセンテッドといって、本物の林檎から香りを移す技法もあります。
このラ・ポムは昔からセンテッドの技法を使っていて、林檎の果皮を紅茶の茶葉と一緒にして、茶葉にニオイが移ってから林檎を取り除くという手間の掛かる方法を取っています。つまり良くも悪くも品質の安定した合成香料とは異なり、時期やロットによって香りにバラツキがある可能性が否めません。それだけでなく林檎の種類や技法による違いもあるかもしれません。とにかく、この缶に関していえば発酵寸前までしなびた林檎の果皮が酸化しているような香りで、書斎のような埃っぽさを感じます。
入手するときは紅茶の特性を知りつつ買うと良いはずです。

EARL GREY – アールグレイ

森林を思わせる香りとベルガモットの香りのハーモニーが絶妙な紅茶。デザートのお供に、午後の紅茶にぴったりです。

久々に感動的な紅茶に出会いました。こちらはフルーツのチップが入ったセンテッドティーです。アールグレイの着香で美味しいものは少ないけれど、フォションは格別の仕上がりです。(もしかしたら茶葉にオイル着香もしているかも)
乾燥茶葉の状態で香りを確認してみますが、国内の某有名紅茶チェーン店のアールグレイのような突き刺さる香りがありません。これは天然香料を用いているために強烈な香気成分が立たないためです。
読者の方の中にもアールグレイの茶葉の香りは良いのに、実際に抽出すると肝心の香りが全然出ていない!とがっかりした人はいませんか?これは着香のオイルばかり強烈なニオイ付けをして抽出後の事を考えていないためです。売り場で「ほら、いいにおいでしょう!」と嗅がされて、家に帰り淹れてみるとガッカリ!なんてことが実際にあるのです。
アイスティーにして香りが付いているけれど、100円ガムのような安っぽいニオイであることも。これは香料のグレードが低く原材料費を抑えているために起こることです。

フォションのアールグレイに話を戻しますが、紅茶・白茶・オレンジピールのブレンドとなっていて、祁門のスモーキーな香りが柔らかく立ち上がります。それも他の香りを邪魔しない、交響曲でいうコントラバスやチェロのような支え方で、祁門と白茶がトップノートにくるベルガモット(金管楽器)との調和をみせます。天然由来のためか温度が下がっても香りの剥離がなく、最後のひとくちまでハーモニーを感じることができます。
高い温度で香りをしっかり抽出してゆっくり楽しめる素晴らしい紅茶です。フルリーフのオレンジペコ主体なのでタンニンが抽出されにくくアイスティーも濁らずに淹れやすいと思います。

THÉ MÉLANGE FAUCHON – フォション ブレンド

柑橘類とバニラ、ラベンダーの香りがエレガントな紅茶。一日のいつでも、デザートのお供にぴったりな、フォションの定番の紅茶です。

もし私がアルコールを一滴も飲めない体質ならば、寝る前はこのフォションブレンドを一杯嗜んで眠りにつくはずです。非常に滑らかで舌触りよく、コクを感じさせるのに渋みが全くありません。
一日のいつでも飲める美味しさですが、特に夕食後のゆったりとした時間に最適です。中国紅茶を使っているようですが、先ほどの一瞬で判別のつく祁門のスモーキーは無く、燻されている感じは目立ちません。完熟した桃の果皮の香りと薔薇の花弁、ラベンダーの破片、新鮮な香りはありませんが、香水のラストノートのような重厚な香りを持っています。

同じフレーバードティーでもアールグレイとは対称的なキャラクターを持っています。軽快で爽やかなアールグレイと、重厚でエレガントなフォションブレンド。時間や気分によって飲み分けるのもお勧めです。
ミルクやアイスは合わないように思います。できればストレートで、薄すぎず濃すぎない絶妙なバランスを見つけ出して、夜の一杯にすることをお勧めします。

撮影中に乱入してきた猫 フォションブレンドがお好み…?

フォション紅茶どれが美味しい?

この中であればアールグレイ、フォションブレンド、マタンオルーブル、モーニング、アップルの順番でお勧めします。
ノンフレーバーの茶葉も美味しいですが、初心者であればアールグレイは特に気に入るはずです。

ウイスキーなんかはラベルが新しくなると味が劣化することが多いのですが、フォションに関していえばラベルが変わろうと味のコンセプトがはっきりしていて、当時感じた香りと味わいを強く思い起こさせるほどブレがありません。香りの軸が何年経っても同じなのが素晴らしいです。コストが高くなる白茶や薔薇などを混ぜてあるので目でも楽しめますし、天然由来の香料なので飲める香水のようでもあります。

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1989年 静岡市出身。主な執筆分野:ライフスタイル、旅行、料理、お酒。