マセラティ クーペで富士スピードウェイ走行会に参加した感想

Prof. 大橋

私は洋服屋であるが、最近実に疎ましい事態が起きている。

それは新しいジャケットやスーツというものが、めっきり自分のクローゼットにやってこないということである。

言わば、マグロを数ヶ月も見ていない寿司屋と同じ状態であり、その主たる原因が車である。

私の手元の愉快なマセラティ達が、次々と修理やメンテナンスを要求し、洋服を仕立てることすらできかねているのだ。

さらには悪い友人達との付き合いも増え、私は彼らに触発される形で、少年の頃からの夢を叶えることとなった。

それがサーキット走行である。

今回はすでに旧車にカテゴライズされてもおかしくない、マセラティ クーペでサーキットをスポーツ走行してきたのでここにレポートしよう。

富士スピードウェイでスポーツ走行をするには?

サーキットを走るというと、何か特別なものが必要に思えるかもしれない。

しかし走行会と呼ばれるイベントに参加する場合にはライセンスも必要なく、ヘルメットやグローブも借りられる(2,000円程度)場合があり、非常に手軽である。

今回はその中でも、富士スピードウェイの運営会社が独自ライセンス取得を促すために開催しているとみられる「TRY!スポーツ走行」という走行会に参加した。

富士スピードウェイの走るイベント情報は以下から確認しよう。

富士スピードウェイ公式

17,000円で計測器付、30分走行という実に手頃な内容だ。

受付〜走行まで約3時間半

当日は12時に集合し、1時間のブリーフィングを終え、走行が始まるのは15:30となる。

ブリーフィングはともかく、受付後など案外待つ時間が長いのは覚えておこう。

大抵YouTubeで富士スピードウェイ走行動画を見たり、フリー走行をしているポルシェGT3 RSに黄色い声援を送ったりしながら待つことになる。

ブローフィングでは各フラッグの意味、サーキット場での注意点や、走行中のマナー説明などが行われる。

イエローフラッグで注意して走行、など色々な情報を詰め込まれつつ「走行会ではどうせフラッグなんか関係ないだろう」と私を含め会場の全員が思っていたはずだ。

(結果、私がイエローフラッグを原因となったことについては後述しよう)

もし走行会に参加するのであれば、ブリーフィングは居眠りをせず真面目に聞くことをおすすめする。

いざ、スポーツ走行!

さあ待ちに待ったスポーツ走行である。

一周はペースカーの後ろについて先導走行を行い、コースの状況などを確認する。

ピットに戻ったら、準備ができた順にスタートである。

ところで私はスタートした瞬間にスキール音をあげてフル加速し、一番前をストレスフリーに走行する予定であった。しかし窓にガムテーブで貼り付けたタイム計測器が外れるトラブルにより、30秒ほど遅れてのスタートになった。

得られた結果はほとんど同じである。誰もいない富士スピードウェイを全開で走り始めた。

まず感じたことは、なんて道が広いのだろう、ということである。

一方通行で凸凹もなく、セイフティゾーンのついた広大な道。それを自由に走ることは、驚くほど楽である。

つまりサーキット走行は、飛ばさなければ一般道よりも簡単だ。

しかしペースを上げていくにつれて、あるものに気づく。

それは30秒ほど前にスタートした他の車たちの姿である。一周目も後半になれば、早速ゆっくりのペースの人に追いついてしまうのである。

そうして、ダンロップコーナー〜パナソニックコーナーにかけての曲がりくねったコーナーで4台ほどをオーバーテイクすることになる。

オーバーテイクもそれほど難しくない!

さて、実はオーバーテイクに関してはかなり緊張していたことを白状しなければならない。

何しろ運転しているのは自分の車、親愛なるマセラティである。

いかなる理由でも保険の適応されないサーキット走行、オーバーテイクで接触などしたら3桁万円は確実である。

しかしこれもまた、杞憂に過ぎなかったことを思い知ったのだ。

というのも、走行会はレースではない。

後ろから自分より早いペースの車が来たら、ラインを譲ってパスさせるのがマナーなのである。

もちろんこのTRY!スポーツ走行というイベントは私を含めサーキット走行が初めての人も多いイベントだ。

必ずしもバッチリとラインを譲ってもらえるわけではなく、速度を抑えて待つこともあったが、オーバーテイク自体は無理をしなければ難しくはなかった。

レースではないこと

車種による速度差が大きいこと

道が果てしなく広いこと

視界が良いこと

がその理由である。

逆にオーバーテイクで接触を起こすとしたら、無理をして追い抜かそうとしたとき、もしくは自車や他車がコントロールを失ったときだ。

一つ言えるのは、コーナーの立ち上がりで抜かすのが良いということ。

ブレーキングは他車も余裕がなく、ラインを譲ってもらいにくい。

1.5kmのホームストレートとフルブレーキング

 

 

さて、後半のくねくねコーナーを抜けると現れるのが1.5kmにも渡るホームストレートと、恐るべき第一コーナーへのフルブレーキングである。

感想は「ストレート短!」というチープなものである。

普段高速道路を延々と走っている人間からすると、1.5kmのホームストレートは殆ど一瞬といっても過言ではない。

スピードにしても390HPのマセラティ クーペでは245km/hが限界で、それほど大迫力という訳でもなかった。

ちなみに一周目では最終コーナーの出口で追い越したBMW M4とストレート勝負をすることになったが、結果は惨敗であった。やはり車の性能ではドイツ車である。

さて、第一コーナーの減速は慎重である。

合計15周程度走ったが、第一コーナーはブレーキしすぎることが多く、オーバースピード気味だったのは2〜3回。それもGを感じながら曲がれる程度であった。

1人ドリフト大会のマセラティ

さて、子供の頃から車のゲームをやり込んだ甲斐もあり、3周もすれば殆どの車を追い越し、周回遅れをパスしながら走りを楽しむ余裕も出てくる頃であった。

しかし私の手元と右足は張り詰めた糸のように緊迫していた。

走り始めから終始車がズルズルなのである。

普段乗っていて発進のときにも滑ったりする車であるから、多少滑るのは覚悟していた。

しかしそんな程度ではなく、終始1人だけ全てのコーナーでスキール音を上げ、アクセルをちょっとでも踏み過ぎれば一瞬でオーバーステア。どんどん車が内側に向いてしまう。

結果として皆が真面目に走る中、1人でドリフト大会をするという惨状であった。

さて、そこで例のイエローフラッグ事件である。

もともとブリーフィングのときに、二箇所危険なポイントを教わっていた。

この二つである。

要は「イン巻き」と言って、オーバーステアで内側に巻き込んでしまうことが多く、セイフティゾーンが少ないため、そのままクラッシュすることが多いコーナーだ。

これもまた人ごとのように聞いていたのだが、何ともその二つのコーナーどちらも一度ずつコースアウトする結果となったのである。

よく考えればこの「イン巻き」はアンダーステア傾向のFF車や、ローパワーの国産スポーツ、トラクションの良い4WDには発生しない。

まともなトラクションコントロールもついておらず、いつでもテールハッピーなマセラティこそ細心の注意を払うべきコーナーであったのだ。

どちらもオーバーステアが原因のハーフスピン。アクセルコントロールの悪さを反省して再スタートした。

走り終わった感想

さて、30分は短いようでかなり長い時間であった。

終わる頃には体力も消耗し、45分なら集中力が持たなかっただろう、というのが感想である。

よく言われるブレーキのフェード現象については、直前の走行会に参加していたマセラティ クアトロポルテの方が「4周目にはほぼ効かなくなった」と言っていたのもあって、だいぶ心配であった。

しかしブレーキ本体の性能の低さは露呈したものの、効かなくなるということはなく、性能はほぼ一定であった。

これは車重や、ブレーキの特性、使い方なども関係あるのだと思う。

とにかくブレーキパッドとローターが消耗しておりタイヤも万全でなかったこともあって、限界走行をしなかったことも正しい判断であった。

ちなみに街乗りではゴツゴツとして不評なサスペンションはサーキットではそれなりに機能してくれた。シングルクラッチのミッションは運転していて楽しく、フルブレーキングで順調にシフトダウンがされないことがときよりあるが、基本的には良いフィーリングだった。

エンジンに関してはやはり名作である。390HPは富士では踏み切っても少し足りないくらいのパワーであり、初心者にはちょうど良い。高回転で軽快にどんどん回していく快感は、やはりNA V8ならではかもしれない。

またブレーキとタイヤを交換し、きっちりグリップして止まるようになれば、タイムは自ずと上がるはずである。

ちなみにタイムの公表は避けるが、編集長はっしーの640iに1秒差で負けるという誠に遺憾な結果であった。


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