外出していないのに何故か慌ただしい今日このごろ。
ふと過去のアーカイブを確認していたら、どうやら昨年の今日(6月26日)からイタリア旅行をしていたようです。現在の情勢を見ると、今年の再訪は難しそうなので気分だけでもと旅行を振り返ってみます。
綺麗だけな写真はインスタグラムに溢れているので、今回は生生しい旅行のショットも含めて掲載してみます。

この旅行では一眼レフカメラを持たずに、iPhone8だけで撮影しているので画質がやや悪いです。

搭乗航空機はアリタリア航空のAZ785。成田 (NRT) -フィウミチーノ (FCO)を13時間で繋ぐ便です。
成田空港国際ターミナルのビジネスクラスラウンジは黒とウッドを基調にしたシンプルなインテリアになっています。
二十歳くらいの頃は、このビジネスクラスラウンジに強い憧れがあり、さぞかし素晴らしく快適なのだろうなと妄想していたのですが、実際に何度か利用するとホテルのロビーラウンジと同等のちょっとした待合室だということに気付かされます。

航空系クレジットカード会員の枠を増やしすぎた為か、年々食事がしょぼくなりつつある成田空港。
干からびた野菜や、乾き物、ちょっとしたレトルト料理が並んでいます。

味噌汁やカレーが人気で、仕事で日本に訪れている外国人が当たり前のように盛り付けていきます。ビジネスマンが昼から生ビールを飲んで上機嫌になっていたりと、空港特有の非日常的な文化があります。ウイスキーなどもありますが、ボトル2千円程度のカジュアルボトルが中心で、ワインはプロセッコなど千円程度、白ワインと赤ワインは自動で注ぐエノマティックのような機械があり、ACブルゴーニュなどが提供されたりしています。ACブルゴーニュの白なんかは冷やすと美味しかったり……。

無理にラウンジを利用せずに、空港内に数多くある料理店で好きな食事をした方が満足度が高いように思えます。
空間は広いので家族連れや大人数での利用は便利かもしれません。サウジアラビアやカタールなどの中東のラウンジは個人スペースが多く、超オシャレなネットカフェ個室みたいになっているので、海外と比べるとプライベート感は少ないです。

悪名高きアリタリア航空に搭乗してみます!
一言で表すとボロい……。中古車屋で50万円で売っているアルファロメオの内装みたいです。
機材が古く20年以上使っている本革シートに似ています。プラスティックの質感も少々ベトベトで、ANAの新機材のようにさらっとはいきません。そして狭い。

エンターテイメントも1990年代のウェブサイトにそっくりです。反応も悪く、用意されていないページのバナーまで残っているので、昔のホームページビルダー時代のウェブサイトを楽しんでいる気分になります。アスペクト比や解像度も悪く、15インチで発色の悪いムラのあるモニターです。
悪いことは言いません、機内で映画を楽しみたいのであればiPadにダウンロードして持ち込むべきです。もしくはボッカッチョのデカメロンでも持っていきましょう。散文芸術を読むのにぴったりの空間です。
最近は30ドル程度で機内インターネットを楽しめるサービスを提供する航空会社が多いですが、アリタリアの旧機材には実装されていませんのでご注意を。

アエロフロート・ロシア航空に続き激まずの機内食です。パスタはゴリゴリに固く、ラビオリはボール紙を噛んでいるよう。トマトを齧って飢えをしのぎます。この旅行で反省して、次回からは空港で和食弁当を買って持ち込むようになりました。
直行便という最短時間でイタリアに行きたい人であればアリタリア航空がベストですが、新婚旅行・ハネムーンなど優雅な旅行を期待して搭乗すると早速離婚の危機です。乗り継ぎ便で良く、急がないのであれば他の航空会社を選ぶのが得策です。

さて直行便を選ぶと必ず付いて回るのが到着時間の問題。なぜかフィウミチーノ空港に現地時間19:00に到着するのです。フライトが遅れたり、出国手続きや手荷物の受け取りに時間がかかることがあります。
とてもスムーズに出れても19:30、イタリアにありがちな様々なトラブルに見舞われると20:00やそれ以降に空港を出ることもあります。市街地まではレオナルド・エクスプレス(フィウミチーノ空港からローマ・テルミニ駅まで直通)で30分、タクシーで1時間程度です。ここにも罠があり、トランクケースが多いと電車に乗せるのも一苦労。
優雅なイタリア新婚旅行を期待してビジネスクラスに乗っても電車で息を上げることになります。タクシーを選んでも一苦労。怪しい運転手がウヨウヨ徘徊し、ナイトサービスと称して高額な料金を取られることもあります。

きっと疲れていることだろうと、空港に最も近いヒルトン ローマ エアポート ホテルに宿泊したのですが、これもまた間違いでした。Google Mapでは空港内のホテルで最も近いと紹介されていますが、実際に連絡通路を歩くと余裕で20分以上かかるのです!これならローマ市街まで無理して行った方がいいじゃん……となったのです。
とにかくイタリア旅行は苦難と受難の日々。多少のことで怒っていてはやっていけない街なのです。

翌日はPiazza Spagna スペイン広場のDOLCE & GABBANAドルチェ&ガッバーナに行ってみます。
荘厳な店内は四方全てが天然大理石で包まれています。それだけでなく様々な種類の石で象嵌細工が施されているのです。天井には一周ラテン語で何か書いてあります。いかなる立派な・・・財産の・・・?でしょうか。後ろには愛する家族の、なんとかって書いてあります。一階はレディース、二階は紳士服ですが、途中の階段も大理石で滑りやすいので、ここでRequiescat in pace.とならないようにご注意ください。

ランチは地球の歩き方で選んでは情弱ですよ!
午前中に寄ったブティックなどで店員さんにお勧めの店を訪ねるのが最も美味しい店を見つけるコツです。陽気で気さくな人が多いので、店員の女性がワイワイ集まってきて、あれでもないここでもないと2~3件選んでくれることでしょう。
その中からグーグルマップで料理や店内の雰囲気が好きな場所を選べばハズレが無いってことです。東京駅周辺の手頃で美味しい店は丸の内OLが一番詳しいのと同じ原理です。

この店の名物?のTボーンステーキです。鉄板の上で焼いたままのステーキに、保温させるためにチップスが覆われています。
食べる前によけて熱々の肉を楽しめるという寸法です。昼から赤ワインと共にSalute! サルーテ。
ボリューム感たっぷりで油も多いので、キャンティ・クラシコのようなサンジョベーゼよりも、モンテプルチアーノやネッビオーロなどの強いワインが合います。

ホテルにチェックインすると、キンキンに冷えたスプマンテが用意されています。
アペリティーヴォのタルトが小さな一口サイズで用意されていますが、サンピエトロ大聖堂を眺めながらご機嫌に飲んでしまうと、そのまま爆睡して丸一日何もせずに終わってしまうので危険です。よほど酒に強いのであれば別ですが、グラス1~2杯にとどめておくべきでしょう。

外では気持ちよさそうにプールで泳ぐ観光客の姿。プールサイドではシャンパンボトルなども販売しているので、買い物や観光を無視して早速ルクスリーな滞在を楽しむのもありでしょう。もしくは文庫を片手にSeptem Montes Romae ローマの七丘について考えにふけるのもまた一興。

夕方の早い時間からリゾート気分で、プールサイドで食事をしてみます。
生ハムやサラダなど前菜は美味しいのですが、メインディッシュのパスタはゴリゴリでした。着席するとすぐに水は炭酸水かどうか聞かれるので、慌てずに答えるといいですね。
イタリアの夜は何もすることがないので、少し散歩をしてから寝ます。

翌朝、ローマ市街を散歩しているとミケランジェロを発見。ドアに彫刻を施しています。
コーン!コーン!と叩く音が聞こえて、ついつい写真を撮ってしまいました。建物やドアなど削り直して塗ることは日本ではまず存在しないので新鮮に思えました。

ある知り合いにお勧めされて、ミシュランガイド星付きの店に行ってみました。
店内の雰囲気や、サービス、ワインリストは立派なのですが、頼んだグラスワインとは別の安いものが注がれていました。
ボトルを目の前で注がない店は怪しいです。恐らく若い東洋人なので何を出しても分からないだとうと思われたのかもしれません。

料理の味はイマイチです。奇抜さがあり、パスタの包みの中身が一つずつ違って、様々な味が楽しめるというアイデアは良いのですが、茹で加減が微妙でヌルくて塩が多すぎます。これならトラットリアなど現地人向けの大衆店に行った方が美味しいものが食べれます。日本でも銀座や赤坂など、接待向けの高級店が存在しますが同じように、星付きレストランは接待向きと考えた方が良いです。ただし英語を完璧に話すスタッフが、きちっとしたサービングを提供してくれます。

車で移動していると、所々で古代の遺跡の後が見受けられます。
写真はヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂の隣にある、アラコエリの多層型共同住宅遺跡です。
紀元2世紀に建てられた当時のアパートみたいなもので、教会の下から発見されました。四階建てになって中は広いスイートルームになっていたようです。西の建物と東の建物に分かれ、アーチ状の小道が繋がっています。まさか古代ローマ人も、二千年近く後に極東アジア人が来て車から写真を撮るとは思ってもいなかったことでしょう。

翌朝の朝食です。アクアパンナとサンペレグリノに飽きてきたので、謎のハーブウォーターを試してみます。
ACQUA AROMATIZZATA CON CETRIOLI E MENTA きゅうりとミントのハーブ水と書いてあります。このサイトにレシピが載っていますが、正直に言うと特に味のしない水です。硬水にミントの香りが溶け込みにくいのかもしれません。
オシャレで健康的なのでセレブに人気なのでしょう。

翌日からは中国人観光客の大団体(50人以上)が押し寄せて、阿鼻叫喚地獄が訪れたのですが、この日は静かで数人の客しか居ませんでした。単なる文化の違いですが、中国人団体はビュッフェ形式に慣れていないらしく、大皿料理を一人で半分以上も取ってしまい、ホテルの人も困っていました。

クスクス、サーモン、ズッキーニ+チーズ、蜂蜜の巣などです。
はちみつの巣を自分で崩して取り分けるのですが、これが信じられないほど美味しくて何回も食べたくなります。

朝から優雅にプールサイドでサービスを受ける宿泊客。
フォーシーズンズホテルも同じように外で食べるゲストが多く、とても優雅に見えます。

ロビーに設置されたアンティークのチェスト。インペロ様式で足がグリフィン?
中央が唐草模様、天板は大理石です。アンティーク家具に詳しくないのですが50年ほど前のそこまで古くない品だと思います。

こちらも立派なチェストです。鋳物のフレームに大理石の天板、中央は突板がモザイク状に象嵌細工が歪曲して組み込まれています。信じられない技術力の高さです。この精度で作るには何年も掛かったのではないでしょうか。
イタリアのホテルですが、フランス製ロココ様式の本物の貴族向けのチェストな気がします。
他にも絵画や彫刻、ブロンズ像など様々な美術品が立ち並びますが、これらを見ていると日本の国内向けの高級ホテル。例えば会員制ホテルのエクシブなど、数千万円の会員権が必要なスイートルームでさえ渋谷のカラオケVIPルームにしか見えません。
アールデコや新古典主義、ロココ様式など適当に設置しているロビーですが、質の暴力、数の暴力は観光客を高揚感と陶酔感に陥れるには充分すぎます。

翌朝はチェックアウトしてフィレンツェに向かいます。
FrecciaRossa フレッチェロッサのEXECUTIVEを予約して乗車したのですが、オリエント急行の一等車とは異なり無彩色で無機質な空間です。「鉄道は乗る機械(※皮肉)」ル・コルビュジエがデザインしたのかって位に酷いデザインでした。

後ろのテーブルが付いているシートに変更できるか訪ねます。
「うん!出来るよ!そのかわりサービスのグレードも落ちるけど」と説明されました。ワインやコーヒー、軽食、雑誌など様々なサービスがついてきますが、シートを移動するとそれらも変更されるようです。誰もいないだからいいじゃん!と思いますが、ファミリーシートの方が快適なので移動しました。

後編に続く

[PR]『朝香珈琲』では、東京の地名をモチーフにした特別なコーヒーブレンドで、あなたの日常に新しい彩りを。可愛らしいパッケージの中に、都会的なコーヒータイムをお届けします。
Share.

1989年 静岡市出身。主な執筆分野:ライフスタイル、旅行、料理、お酒。