生涯を共にしたくなる極上のスーツを手に入れようとしたとき、候補にあがるブランドといえば、やはりイタリアのスーツブランドでしょう。その中でも特に人々の心を掴んで離さないブランドと言えば、Kiton キートンとCesare Attolini チェザレ アットリーニではないでしょうか。

どちらもイタリア ナポリに起源を持つブランドですが、その名前は世界中で知られており、最高級スーブランドとして確固たる地位を築いています。

しかし最後の最後にこのどちらを選ぶか、それこそがその人のセンスを表す部分ではないでしょうか。どんな人にKiton キートンが似合うのか、どんなシーンでCesare Attolini チェザレ アットリーニを着こなすべきなのか。

今回はそんな視点でこの二つのブランドを見ていきましょう。

圧倒的にラグジュアリーな生地使い Kiton キートン

もともと生地商であったチーロ・パオーネが創業したキートンは、今なお圧倒的にラグジュアリーな生地を惜しげも無く既製服に用いる世界でも稀有なブランドです。

非常に高品質なウールはもちろんのこと、14ミクロンや13.5ミクロンといった超絶繊細な生地も、まるで普通の布を扱うかのように立体的なジャケットやスーツにしてしまいます。

また用いる生地はウールに限らず、非常に高級なカシミアやシルクなど、艶やかで風合いに富んだものばかりです。

例えばパーティで着るスーツでは、一番重要なのはパッと見たときの華やかさとエレガンスでしょう。上質な生地が放つ光沢、そしてドレープ感はそのようなシーンに必要不可欠なのです。

どちらかというと質実でビスポークに用いられるような生地が選ばれるチェザレ アットリーニに比べると、キートンはやはり圧倒的な贅沢さを感じる生地が多く、それこそが魅力なのですね。

装いにラグジュアリーさが求められる場面では、やはりキートンのスーツを選ぶのが一番です。

スミズーラに最も近い既製服 Cesare Attolini チェザレ アットリーニ

サルトリア ナポレターナの伝統を築き上げたと言っても過言ではない、伝説の職人 ヴィンツェンツォ・アットリーニ。彼が生み出したパターンやディテールを守り続けるチェザレ アットリーニは、世界に数あるスーツブランドの中でも、最もスミズーラー(注文服)に近いスーツと言えるのではないでしょうか。

やや構築的なショルダーに控えめな雨降らし袖、そして堂々としたラペル、立体感のあるチェスト。全ての部分が高いレベルで仕立てられており、漂う雰囲気は明らかに一般的なマシンメイドのスーツとは一線を画すハンドメイドならではのものです。

チェザレ アットリーニのスーツを着ている人は、非常にお洒落な印象を与えます。シルエットはオーセンティックなので浮ついた感じはありませんが、どことなく漂うサルトリア ナポレターナ的なハンドメイド感は、他のブランドにはない独特の洒脱な雰囲気があります。

チェザレ アットリーニの立体的な仕立てはグラマラスで、どちらかというと中庸なキートンに比べるとビスポーク的です。仕立てる時間がないナポリのエリート ビジネスマンたちもチェザレ アットリーニを愛用しています。

普段の仕事で着こなすのであれば、チェザレ アットリーニのスーツが良いでしょう。

それぞれのスーツに似合う着こなしとは?

ラグジュアリーさが全面に現れるキートンのスーツは、あまり飾らず定番のブランドと組み合わせてシンプルに着こなすのが一番エレガントです。

例えばグレーのキートンのスーツにジョンロブ パリの黒いレースアップシューズを合わせ、バッグにはエルメスのサック ア デペッシュにようなスタイリッシュで贅沢なレザーの物を選んでみてはいかがでしょう。シャツは白のセミワイドに、幅の広目のボルドーのネクタイなども良いかもしれません。

キートンのスーツを着こなすときに大事なのが、身につける他のものがキートンのスーツに見合った物であることです。

あまりファッショナブルになりすぎる必要はなく、クオリティを揃えて行くことがキートンのスーツをエレガントに着こなすコツではないでしょうか。

反対にチェザレ アットリーニのスーツであれば、例えばストライプシャツを用いるような少し洒脱な着こなしもよく似合います。シンプルなネイビーのスーツに、美しいマルチストライプのシャツを合わせてそこに無地のネクタイを。

靴やバッグに関してはそれなりに気に入ったイタリアや英国製のものを気取らずに合わせるのが一番です。むしろ大切なのは色合わせではないでしょうか。ビスポークっぽさのある立体的なスーツでは、むしろ着こなしのセンスこそ、スーツの魅力を引き立てる一番の要素です。

イタリア的なニュアンスを取り入れながらも、色のトーンを2〜3に絞って、やりすぎることなくさらりと着こなすことを心がけるとよいですね。

Kiton キートンか、Cesare Attolini チェザレ アットリーニか

これはとても難しいチョイスですが、自分にとってスーツに求めるものや、着こなしの傾向がわかれば、自ずと選ぶべきブランドが見えてくるはずです。

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後天的イタリア人。 メンズファッション、車、オペラ等について執筆する兼業ライターです。 本業は田舎の洋服店。