こんばんは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

私の一番の愛車であるマセラティ クーペは、実に素晴らしい車です。

運転すれば思わず微笑んでしまうような高揚感、ダイレクトなフィーリング、そしてスポーツカーらしいわんぱくな楽しさ。それだけでも十分なのに、このサウンドとエクステリアですから、もう夢中になってしまうのです。

そういうわけで前回はマセラティ クーペの素晴らしい部分を紹介しました。

しかし夢中になっている私も、誰かが「クーペを欲しい!」と言ったとしたら、手放しにおすすめすることはないでしょう。

この車と付き合うのには、ちょうどイタリア人の女性と付き合うくらいの覚悟が必要なのです。

まあ、とはいえイタリア車はどれもこれも大抵「覚悟が必要だ」と言われているものです。今日はマセラティ クーペに乗る上で決めるべき覚悟の内訳について、詳しく紹介することとしましょう。

減りゆくクラッチ残量への覚悟

まずカンビオコルサに乗るからにはどうしても避けられないのが、クラッチ交換です。これは壊れる壊れないというよりは単純な消耗品で、比較的頻繁に65万円のクラッチ交換を行うことが必要とされています。

これはまず決めなければならない覚悟です。

しかしこの比較的頻繁の頻度は乗る環境によってかなり違いがあるのです。

私の場合にはカンビオECUを入れていて、8000kmで20%の減り。仮に100%きっちり使い切ることができたとしたら(おそらくそうはいかないでしょうが)40,000km乗れる計算になります。現実的には30,000km〜35,000kmの頻度で交換するようなイメージでしょう。

しかし驚くべきことに、前のオーナーさんのクラッチ交換履歴を見るとECUが入っているにも関わらず4,000kmで実に30%クラッチが減っています。単純計算すると13,000kmでクラッチ交換、現実的には10,000kmちょっとで交換という消耗具合なのです。

重要なのは乗る環境と駐車場、乗り方です。

まず私の場合には静岡で比較的交通量が少ないうえ、クアトロポルテを足車にしているため、混んでいる時間や場所ではクーペに乗らずに済んでいます。乗るのは道が空いている夜や、田舎に行く山道等がメインのため、ストップ&ゴーが少なくクラッチが消耗しにくいようです。

また駐車場もできるだけ平坦で広いところを用意しており、一回の切り返しでスパッと駐車しています。やや坂道になっている駐車場や、なんども切り返す必要のある駐車場ではクラッチの減りが大幅に増加すると言われています。

乗り方としては発進のときに前の車と車間を少し開け、やや多めに素早くアクセルを開けることで一気にクラッチをつなげています。だらだらとした半クラが最も消耗しやすく、カンビオECUについても結局はアクセルの開度を大きくすることで半クラを短くしていますので、その点を意識すると随分変わります。

長くなりましたが、総合すると駐車場がしっかりと広く取れて、交通量の少ない場所に住んでいる人ほど、クーペは維持しやすくなるでしょう。

「ウインカー?やってみないと分からないなあ」への覚悟

さて、このクーペ カンビオコルサに乗るうえで、私はすでに可愛さとして納得している部分ではありますが、この時代のマセラティは何につけても気まぐれです。

ご機嫌次第ではエンジンをつけた瞬間から絶好調、不機嫌であればウインカーもワイパーも動かずエアコンもつかない、なんてことも少なくありません。

しかし大抵のことは、ゆっくりと停車して一度エンジンを切り、もう一度愛情を込めてエンジンを付け直すことで解決するのです。

「やってみないと分からないなあ〜」

クーペはそういう車なのです。できることもあればできないこともある。おかげさまで症状の再現ができず車屋さんに修理をお願いしても原因が発見できないことが多いですが、それでもうんざりしない覚悟が必要と言えるでしょう。

燃費というものを考えない覚悟

さて、燃費というものについては考えないようにましょう。

そして、ただただ考えないという覚悟こそがこの車を維持するモチベーションになるのです。

それでもちょっと気になってします人のために書いておきますと、だいたい普通にゆっくり流して平均が5〜6km/lくらいの燃費です。

しかしこの車の楽しさを味わうような運転で、高回転を使用すると、目視で燃料計の目盛りが減っていきます。

今日も山道で「4分の1あるからいいか」と思いながら走っていたら、5分後にはほぼエンプティになって、大急ぎでガソリンスタンドに向かったことは誰にも言えません。

満タンにするとだいたいリッター150円くらいで1万円強のレシートをもらうことができます。

一泊二日に最適なトランクへの覚悟

実にシンプルな問題ですが、マセラティ クーペのトランクは実に「こじんまりとしてお洒落な空間です」になっており、4泊5日の旅行などは実に困難を極めるでしょう。

もともと4400mm程度とかなりコンパクトなクーペであるため、トランク容量には諦めがつくのですが、実は同じクラスの他の2ドアに比べるとマセラティ クーペは後部座席の実用性にかなり重点が置かれています。

あのBMWの6シリーズでさえ、後部座席がほぼ猫専用なのに対し、マセラティ クーペの後部座席は小さい大人が2人快適に座れるサイズになっているのです。

ですので、旅行の際などはトランク+後部座席で乗り切ることになるでしょう。

ちなみに彼女が御殿場アウトレットでセリーヌやクロエ、ロエべなどのバックを爆買いしようとしているときに、「もう車に乗らないよ」とやんわり抑止することができるでしょう。

彼女に呆れられる覚悟

この車の楽しさ、よい部分の一つに非常にスポーティな乗り心地があげられるのですが、まさにこの部分こそあなたの大事な彼女や奥様をうんざりさせる点と言えるでしょう。

クーペにはノーマルモードとスポーツモードというものがあり、スポーツモードではシフトチェンジが素早く、足回りが硬くなります。

シフトチェンジの素早いスポーツモードの方がクラッチの持ちが良いうえ、ノーマルモードのシフトフィーリングが半分しか固まっていない寒天といった具合なので、基本はスポーツモードで走ることになります。

しかし足回りが硬くなるので、まるで昔ながらの走り屋の車のような乗り心地でドライブを楽しむことになるのが、マセラティ クーペの定めなのです。

もちろん一人のときにはそんなこともお構いなく、というよりむしろ楽しくて仕方がなく、もはやもっと硬くても良いのではないか?と思うくらいですが、同乗者はたまりません。

硬いサスペンション、狭いランバーサポートに硬いシート、昭和のラジオのようなカーオーディオ、騒音、初心者のMTのようなカンビオコルサの振動。

女性に一言で表現してもらえば、まず間違いなく「不快」という言葉を選ばれるでしょう。

決してロングドライブには向いていません。

今回はマセラティ クーペのウィークポイントというべき部分を紹介しました。

個人的にはクーペをセカンドカーにして、足車を用意することで全ての問題が解決するような気もしますが、いかがでしょう。

これから買おう!という人はぜひ参考にしてみてくださいね。

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後天的イタリア人。 メンズファッション、車、オペラ等について執筆する兼業ライターです。 本業は田舎の洋服店。