(写真はアルファロメオ公式サイトから拝借しました)

こんばんは、今回はウェブマガジン「RINASCIMENTO」の中でも、個人的な意見や思ったことを書く「PENSIER(思想)」のコーナーに投稿させていただければと思います。

さて、車の業界では旧車と呼ぶほどには古くなく、かといって新しくもない70年代〜90年代の車を懐かしさを込めてネオクラシックカーと呼びます。

しかしこのネオクラシックという言葉はこの場合誤用であり、本来はセミクラシックカーと呼ぶべきではないかと思うのです。

ネオクラシックの語源であるすなわち「新古典主義様式」というのは、18世紀に南イタリアの古代ローマ遺跡の発見が火付け役となって流行した、ギリシャやローマの古典的様式への回帰を特徴とするスタイルです。

この「ネオ」という言葉は英語のNEWという単語と同じように考えてよいでしょう。「新しい」という意味です。

しかし注意すべきなのは、このネオクラシックという言葉が「新たな古典」を示したのであって、「それほど古くない古典」を示しているわけではないという点です。

19世紀にはロンドンのウェストミンスター寺院にも見られるようなゴシック様式の復興「ネオゴシック」というものも見られますが、これもあくまで「新しいゴシック様式」であり、「それほど古くないゴシック様式」にはならないのです。

このことから、70年代〜90年代の車を総称するのであれば「クラシックではあるがその度合いはまだ完全ではない」という意味合いでセミクラシックカーと呼ぶ方が妥当ではないかと考えます。

本来の意味を考えるとネオクラシックカーと呼ぶにふさわしいのは例えば、アルファロメオ 8Cのような車ではないでしょうか。

複雑なプレスラインと切れ長なライトデザインが主流な現代に突如として現れた、丸目ライトと流線、そしてまっすぐ切り落としたようなテールデザイン。見るからに旧車回帰を感じさせながらも、完全なレプリカではなくれっきとした新しいデザイン。実に新古典主義的な存在です。

ネオクラシックカーという言葉がどのように生まれたかはわかりません。ただ車の評論は往々にして非常に豊富な車の知識とやや軽薄なその他の知識を混ぜ合わせて行われることが多く、その中で思いつきによって生まれたこの言葉が定着したのだと思います。

建築や芸術の様式自体は20世紀に入ってほぼ消滅してしまったので、今更躍起になって本来の意味にこだわる必要はないでしょう。

大事なのはこの言葉が生まれた背景、つまり車の評論をするときに擦り切れた言葉を繰り返してしまう安直さ、表現の乏しさを見直すことではないでしょうか。

車メーカーやデザイナーが工夫を凝らして作り上げる車を、評論する人が斬新で趣のある言葉で表現すれば、車業界はもっともっと面白くなるはずです。

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後天的イタリア人。 メンズファッション、車、オペラ等について執筆する兼業ライターです。 本業は田舎の洋服店。