オンライン会議で「良いアイデア」が生まれない理由とは

はっしー


知人のL氏と新橋のガード下でビールを飲んでいると、こんな話題が出てきました。
「オンライン会議って効率良いように見えて、効率悪くない?」
なるほど、これは深いテーマだなと思い記事に取り上げることにしたのです。

あのときの会議は本当に無駄だったのか?

世の中には無数の会社が存在しますが、ある程度の規模になると「会議」は避けては通れません。
短期・長期の事業計画作成、経営企画、新しいプロジェクト、営業計画など様々なテーマがありますが、多くの場合滞りなくスムーズに決定することは少なく、何度も同じテーマで会議を行ったり、結論の見えない不毛な繰り返しの議論が発生します。彼方立てれば此方が立たぬ、ということわざがありますが、まさにそのとおりで品質を重視すればコストが悪化して、コストを重視すれば品質が下がる。立場によって双方が「正しい主張」という剣と盾をかざして会議は繰り返されます。

「会社の会議がなくなれば、もっと仕事の効率が良くなるのに!」

ネット上でも現実世界でもそんな意見を何度も聞いていました。しかし、新型コロナウイルスの影響で「完全オンライン会議」に移行したのに効率が悪いという話を聞くのです。なぜこんなことが起こるのでしょうか。

1960年代世代「とりあえず会って話そう」

昔から不思議に思っていたのが、団塊世代と団塊世代ジュニアは同年代でも、孫のような年下でも同じようにすぐ会おうとします。簡単な用件で電話をかけてきても、「とりあえず今から来てくれ」「一回会って話そう」とすぐに呼び出します。私はここにオンライン会議の矛盾をつく点があるような気がしてなりません。

車を運転する人であれば分かるはずですが、アクセルにもブレーキにも、ハンドルにも「遊び」という余白が存在します。
例えばハンドルを右に切っても、すぐには車は右に向かいません、余白の意味のない部分を経てそれでも更に舵を取るとタイヤが切れて右に向かいます。この場合では一見、無意味に思える「余白」に意味があるのです。

「何をして欲しいのか」分かっていない上司

上司に「メール設定をしてほしい」と電話を受けて、優れた社員であれば在宅のままリモートデスクトップで上司のパソコンを遠隔操作して、ものの15分でメール設定を完了してしまうかもしれません。たしかに要求に対して最短ルート、スピーディーに100%の結果を出したといえます。

ですがその上司が、自宅のパソコンメールで在宅での社員との連絡を行おうとしていたらどうでしょう。もし会社に呼び出されて会話の中でそんな話が出たら「今どきメールなんて古いですよ!Slack(スラック)で部門ごとに管理すれば社員同士が垣根なくスムーズに連絡できますよ。他にもBacklogというソフトならタスク管理やプロジェクト管理もスムーズに行えますよ」と別の提案ができます。それが会社に関係なく、孫との連絡に使おうとしていたら、スマホの購入に付き合ってあげてラインの設定をしているかもしれません。
そんな「余白」の時間にしか出ない話も確かに存在するのです。本人が何をしたいか、どうすればいいのか、分かっていないケースもあります。

自宅でオンライン会議をしている人の例(筆者撮影)

緊張感の無い中で生まれるアイデアとは

オンライン会議というのは一見信じられないほどに効率的に見えます。
同じ部屋に集まる必要がない、インターネットにつながるパソコンかスマホさえあれば良い、環境に左右されない。
起きて会社に行く準備をする時間や通勤時間を含めれば1日のうちの3~4時間を効率化できるかもしれません。

それでも目に見えない弊害があります。それが緊張感の欠如です。
本来は仕事を終わって、曲がりなりにもリラックスするために存在する自宅を使って業務をするのです。パソコンを開いただけで、そのオンとオフの切り替えを明確にできる人は少数派といえるでしょう。また服装も自由で”通勤”という気持ちの切り替え時間もないので、「会議の10分前に起きた」なんて人もいるかもしれません。

ただでさえ仕事に集中が難しい環境で、二人以上のオンライン通話となると人数が増えるごとに緊張感が失われていきます。二人だけでの通話は互いの会話に集中する必要があり、議題やテーマに対して頭を回転させたり、雑談で良いアイデアがでたりすることもあります。しかし、三人、四人と増えていくにつれて自分の責任のウェイトは減っていく一方です。
自分の発言が少なく、責任感もなければ寝間着でソファーで爪を切っていようと、テレビを無音にして見ていようと、Youtubeを流していようと会議は進行してしまいます。これが冒頭に出た「オンライン会議って効率良いように見えて、効率悪くない?」という話の大きな原因のひとつであると思います。

予備校・学習塾にも共通点がある

これは仕事だけでなく学習についても同じことがいえます。
中学生、高校生は受験対策で高額な予備校や学習塾に通うのが一般的ですが、なぜスタディサプリのような定額動画配信で代用できないのか、それも同じことが当てはめられます。いまどきでは優れた塾講師の講義を録画して配信している会社もあるそうですが、それでも実際にカバンと筆記具を持って講義に参加するのとでは緊張感と集中の仕方が異なります。

たいていの場合、無機質なビルの一室に部屋があり、真っ白の大光量の照明はウトウトする暇もありません。そこでチョークやホワイトボードにマーカーで書き込む音と、講師のメリハリのあるキレの良い声で授業がハイペースに進行します。
よく心理的に考えられているのが、成績優秀者が前列、そこから後ろに向かっていきます。優秀な人は前列に邪魔されず、成績が優れない人でも前の人たちに引っ張られるという効率の良い配列です。
いかに学習に対する意欲が低下しやすいか、というのを企業は理解しているので、集中できる環境作りに徹底しています。

優れた塾講師の動画でも画面に「再生・停止ボタン」があって、周りに漫画本やゲーム・スマホがあれば誘惑に負けるのは目に見えています。

立ち話でいいから会って話すときも必要

こういった理由から仮にほとんどの会議をオンラインに移行したとしても、社員と個別にまたは複数人で実際に会って話すのは大切です。何も会社の会議室でなくても、駅構内の喫茶店でも、セブンイレブンのコーヒー片手に駐車場での立ち話でもいいので、「どう思う?」「どうしたらいいと思う?」こういった話を会ってするべきです。
むしろ移動中の短い時間の限られた立ち話のほうが”濃い話”が出やすいと思います。午後1時から夕方まで会議室を予約して話すのと、駅構内のコンコースで10分立ち話するのと同じ結果ということも有り得るかもしれません。

オンライン会議で思った結果が出ない、そんな体験があれば実際に試してみてください。

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