東京ミッドタウン日比谷のレストランフロアにある「礼華 四君子草(らいか しくんしそう)」に行ってきました。この礼華というお店は、新宿御苑、青山、日比谷に店舗があり、料理の傾向なども似ています。昨年の新宿御苑店に行った時、あまりの美味しさに感動して何度か訪れています。

高級店から大衆店まで数多くの中華料理店で食事をしましたが、都内で美味しい料理に出会うことは難しいのです。金額が高ければ美味しいというわけでなく、(実際に名前は上げられませんが)ランチ1人1万円以上するような高級店であってもファミレス並の味、バーミヤンと同レベルの料理が出てくることもあるのです。給仕の人数が多くフロアが広く立派なだけで、肝心な味が目も当てられないこともしばしば。コース料理の途中で店を退店したこともあるくらいです。もちろん料金は全て払いましたが……とほほ。

礼華ではNO MSG(うま味調味料不使用 )の表記があり、実際に厨房で使っていないだけでなく、料理に用いる調味料にさえ細かくチェックするという厳しさです。塩も精製塩ではなく、自然由来の塩で調理されています。野菜も一部を除いて無農薬野菜を選ぶというこだわりようです。それでいながら、ごく普通の高級中華料理店の雰囲気で来客者に強制をしていないところが好感を持てます。店内の雰囲気と一緒に、料理の味について紹介してみます。

開放感あふれるテラス席からは日比谷公園を見渡せるようになっています。
東京の中心にいながらにして、ロンドンの郊外の自然公園のような雰囲気を楽しめます。三階なので高層すぎず、木々より少し上の目線になるので周辺のビルも見えずに圧迫感がありません。今日は中の円卓で食事をしてみました。

半円形のソファーとクッションがあり快適な空間です。
5人席と紹介されていますが、ゆったりと使うには2人か多くても3人をおすすめします。何度か店に訪れたことがありますが、来客の多い日に直前に予約すると狭めの席になることもあるので、できれば1~2週間前に連絡して広めの席を確保すると快適に食事ができます。

リネンの手触りも良いですが、礼華の好きなところはゴールドトリムであしらったアクセントプレートに、タッセルつきのナプキンリングが置かれているところです。落ち着いた色合いのゴールドなので派手になりすぎず上品な演出になっています。本来は食卓に併せにくいミニ盆栽も雰囲気を引き立てて、テーブルコーディネートのセンスがある人が監修していることが分かります。

昼なので台湾茶をいただきます。阿里山烏龍茶の中でも、金萱烏龍という台茶12号品種を用いた茶葉を提供しています。他店にも阿里山を提供している店がありますが、多くは青心烏龍で細かくクズになったような低級な茶葉を出してくることもあります。
私は一般人と比べたら台湾茶の味には厳しいのですが、礼華はメニューにあるどの中国茶・台湾茶を注文しても満足いく品質です。料理がなくとも豆菓子と茶だけで一服できるほどに質が高いのです。

カウンター席には茶芸一式、茶盤から茶壺、茶杯、茶海、茶匙まで揃っています。使っているところを一度も見たことがないのですが、店には茶藝師がいるのかもしれません。ともかく礼華に行くのであれば必ず飲み物メニューから、何か中国茶・台湾茶を選ぶのをお勧めします。

茶がきたら茶壷の蓋をはずし、過度に蒸らされるのを防ぎます。そしておかわりをする時は、注ぎきれる量だけ湯を入れて30秒程度蒸らします。杯を重ねるごとに時間を長くします。蓋碗に注ぐときは、最後の一滴まで完全に注ぎ切るようにします。これが美味しいオススメの飲み方です。

ちなみに無料のサービス茶も存在しますが、さすがに無料なだけあって品質はまずまずです。茶葉を頼むと何倍でも湯をおかわりできるので、サービス茶を断り、好みの茶で食後まで通すのがお勧めです。もしくは食前から途中までは軽快な茶葉を頼み、後半から食後まではコクの強い茶葉に替えるなども良いでしょう。

突き出しは台湾の筍、水煮ですが噛むと味わい深いにも関わらず塩気が強すぎずに美味しいです。
グラスワインやビールというよりは、茶に合うような味わいです。金箔で彩られていますが、これもまたアクセントプレートと相まって鮮やかに見えます。

今日のメニューです。手頃な梅コースで税込¥4,620〜です。
季節のアミューズ、8種の前菜盛り合わせ、トマトと酒醸の冷製スープ、鱧真薯の湯葉包み 翡翠ソース、黒豚のスペアリブの鎮江醋煮込み、麻婆豆腐ご飯 チーズのせオーブン焼き、やわらか杏仁豆腐。
これにイカの塩麹炒めと、水餃子を追加しました。

さて前菜ですが、左上からエビの薔薇と紹興酒漬け、冬瓜の生ハム巻き、タコの野菜巻き、鶏のハムの醤油漬け。右下がチャーシュ、黒豆の黒酢似、クラゲのピンクペッパーと酢、野菜の酢漬け。

可愛らしい8品盛りですが、中でも美味しいのがエビとクラゲです。エビは殻まで食べられる、むしろ殻が一番美味しいくらいです。日によってバラの香りの強さが異なりますが、あっさりとした臭くない紹興酒に漬け込んであります。
クラゲは食感が良く、千切りではなく包丁を入れて、菊の飾りのようにカットしてあるので歯応えが良いです。黒豆やチャーシューも美味しいですが、チャーシューだけでいうと恵比寿の中華香彩JASMINE (ジャスミン)の方が好みです。

水餃子はバラのような形に整えられて、右のタレが辛味のある麻辣ダレと、酢と生姜が添えられています。中の具材に味が付いているので、そのままでも充分美味しいのですが、2個目は味を変えても楽しめます。

写真の右下はトマトと酒醸の冷製スープですが、これは家では再現できない得も言われぬ旨みです。酒醸(ちゅーにゃん)という発酵調味料が、肉の出汁や魚の出汁とも違う優しい甘みです。日本酒の麹カスを溶いた甘酒とも少し違う、独特な甘みがあり、トマトの酸が優しく包みます。おかわりしたいほどの旨さです。

メニューを失念してしまって、うろ覚えですがヤリイカ?の野菜炒めです。本日一番美味しかった料理です。
塩や調味料が薄いので、化学調味料慣れしている人にとって味が無いように感じるかもしれません。米麹のような発酵調味料の香りと共に、香り豊かな胡麻油、紫蘇の花、天然塩が優しく混ざっています。野菜の甘みを引き立てるような調理方法で、イカの方に塩を染み込ませているように感じました。ズッキーニやブロッコリーなど一つ一つから旨みが出てきます。

鱧真薯の湯葉包み 翡翠ソースです。
コンセプトも味も良いのですが、鱧の特徴を喪失している気がします。冷たい鱧に梅酢を添えて食べた方がシンプルに美味しい気がします…。鱧は骨切りなど技術が必要ですが、それ以上に調理方法も問われる難しい食材です。湯引きや天ぷらなどが一般的ですが、私もその方が好みです。

黒豚のスペアリブの鎮江醋煮込み。
スペアリブが柔らかくホロホロで、箸だけで崩せるようになっています。この料理の面白い所は、手前のスペアリブの味付けが薄塩の鎮江醋で仕上げられ、奥の添え物野菜である空芯菜などが塩気を効かせている所です。普通であれば肉が塩っぽく、野菜が口直しに無塩になっていることが多いからです。鎮江醋のタレも単に片栗粉でゼリー状にしてあるのではなく、肉由来のゼラチン質のような部分が混じって単調ではないのが面白いです。

麻婆豆腐ご飯 チーズのせオーブン焼き。
チーズは蛇足でしたが、中の麻婆豆腐は花椒の香りが良く、辛すぎないのに香りの立ち方が良いという技術です。単に辛くて美味しい麻婆豆腐を出す店はありますが、化学調味料を使わずに塩や辛味も抑えているのに香りも良く仕上げるのは職人芸としか言いようがありません。面白いアイデアですが、私は新宿御苑店の炒飯の方が好きです……。

食後の杏仁豆腐。
これまた美味しい一品で、香りが良くあっさりとした味わいで、美味しい絹ごし豆腐を食べているかのようです。砂糖が少なく甘さ控えめなのですが、上白糖ではなく、別の天然の糖を用いているように思います。キレがあるのにくどくなく、すいすいと食べてしまいます。

今回はランチなのでお酒を頼んでいませんが、様々な国のワインが揃っています。
これだけ優しい味わいだと山梨の白ワインなんか相性が良さそうです。辛すぎる四川料理と異なり、ワインとのペアリングの可能性は無限大です。紹興酒も何種類かあり、シャンパーニュやビールなどもあります。
接待だけでなく、友人、家族、デートなど誰と行っても楽しめる素晴らしいお店です。

中国料理 礼華 四君子草

所在地: 〒100-0006 東京都千代田区有楽町1丁目1−2 東京ミッドタウン日比谷 3F
電話: 03-6273-3327 営業時間 ランチ 11時30分~16時(15時LO) ディナー 17時~23時(21時LO)
定休日 年中無休
http://www.rai-ka.com/hibiya/


この「礼華 四君子草」には久々に訪れたのですが、化学調味料断ちをしたからこそ気がつく優しい味に驚かされました。
私は3ヶ月ほど前から化学調味料断ちをして、無添加調味料と書いてあるものさえも使いません。酵母エキス(タンパク加水分解物)などアミノ酸混合物は”化学”ではないとの理由で無添加調味料として売られているのです。この話は今度にして、礼華の料理は食塩も最小限で、食材本来の旨みを最大に引き出す調理をしています。

普段から減塩している人でさえ、おお!と思うほどに薄い仕上がりです。昨今の中華料理はコンビニ弁当の如く濃い口で、アミノ酸混合物の添加でコクを出す技術が一般的になっています。調理学校の実技でも当然のように「白い粉」を用いるのです。家庭で忙しい時に、パッと使う分にはまだしも、加工食品の時点でアミノ酸を含む大量の添加物、その上に中華料理店の調理の時点でも添加するというオンパレードです。

中華料理の食後に口の中がイガイガしたり、違和感を覚えたことは無いでしょうか?美味しく感じる料理でも、食後に口直しの水をコンビニに買いに行ったり、ペットボトル茶を慌てて自販機で買った覚えはありませんか。この礼華のコース料理は、様々な味付けの美味しい料理を満腹食べたあとなのに舌に一切の負担がないのです。
胃もたれは勿論ありませんし、最初に注文し10煎近く飲んだ台湾茶の繊細なコクと香りさえ感じ取れるほどです。元来の家庭料理に近い味付けや調理方法なので、食べ疲れもしませんし、身体への負担も少ないです。
みなさんも、ぜひとも一度で良いので本当に美味しい中華料理を試してみてください。

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1989年 静岡市出身。主な執筆分野:ライフスタイル、旅行、料理、お酒。