レコードは構造こそシンプルで理解しやすい設計ですが、それ故に奥が深くマニアになるとスピーカー以外にも、針の種類や真空管アンプ、レコードの重量盤など色々な部分で違いがあり難しいと言います。

私も趣味でレコードを楽しむ程度で、累計で4機種を所有していた程度の入門者なのですが、実際に初めてレコードプレーヤーを買う人が失敗しやすい部分など「レコードプレーヤーの選び方」について書いてみます。
レコードとコンテンツの浪費」でも触れましたが高音質という意味では現代のハイレゾ音源の方が優れていると言えます。最近のハイレゾ音源はCDよりも情報量が多く音域も広く、そもそも収録環境が20世紀と異なり劇的に進化しています。

逆に言うとレコードは収録が60年代以前なんてのはザラで、いくらレコードの盤面の状態が良くても再生するとAMラジオ以下で、うげぇ〜こんなんで良く満足していたなぁ。と思う収録もしばしば当たるのです。それでも尚レコードと対峙するのは、独特な魅力があるからに違いありません。

レコードは急いで聴くものではない

様々な音楽再生機材がある現代では、ゆっくりとした時間を過ごすためにレコードがあると言っても過言ではありません。何しろAmazon MusicなりSpotifyなりわずか千円にも満たない月々の定額料金で何百万曲も聴ける時代なのです。
かたやレコードはA面、B面合わせても1時間に満ちません。レコードは種類によってシングルサイズCDのように小さいもの(7インチ)がありますが、現在は12インチが一般的です。回転速度も33回転と45回転があり、レコードの切り替えボタンで、ほとんどの機種が再生できます。
33回転はゆっくり回るので収録時間が長いクラシックやジャズが多く、45回転は収録時間が短いけれど音質がよくなると言われています。いずれにしてもCDアルバム以下の再生時間にも関わらず1枚数千円して、さらには途中で盤面を手で裏返す必要があるのです。これは急いで聴くようなものでないということは明らかです。

音楽に対峙しろと言うマスター

山梨県の清里高原にある隠れたジャズバーでは、多彩な1940年代から現在に至るまで多彩な音源が聴くことができます。かなり昔、そこで好きなレコードを聞かせてもらった事があるのですが、途中でレコードを止めようとするとマスターに「最後まで聞きなさい」と怒られてしまいました。A面なりB面なり、しっかり最後まで聞いてから別の曲を聞きなさいと言われたのです。

そこ頃はウォークマンで好きな曲だけプレイリストにしていて、バンバン曲を飛ばしていた現代人だったので、うるさいオヤジだなぁ〜と思っていたのですが今こうして自分でレコードを聞いていると一理あるのです。

1曲聴くのが大苦労

レコードを聴くというのは、たった1曲でも準備が必要です。
まずは部屋を少し片付けて朝ならコーヒー、昼なら紅茶、夕食後ならウイスキーを用意します。それと同時にアンプを温めておきます。電源を付けたてでは音が固いので電源を付けて30分以上暖気した方が良いです。(純A級やAB級、真空管など駆動方式によっても異なりますが、デジタルアンプでないのなら暖気した方が良いです。)
そして棚から好きなレコードを選び紙ジャケットから取り出し、プレーヤーにセットします。フルオートプレーヤーでない場合は、針を上げて1曲目に指で合わせて、ONにしてターンテーブルを回してから針を落とします。

スマホならタップ一つで再生できるものが、こんなにも手間と体力が必要なのです。そして何よりも20分程度で曲が終わってしまい、裏返す必要があるのです。フルオートでないと曲が終了していても円盤が周り続け、何も溝がない部分を針がなぞり続けるのです(!)

余裕が無い人はフルオートが良い

私は今までデノンやソニーの古い機種を中古で入手していたのですが、最近初めてTEACの本木目のレコードプレーヤーを新品で購入したのですが、最新機種でありながらフルオートではないのです。
そうなるとオンオフどころか、集中して1曲目に針を落としたり、音楽の終了時間に対しても気をかけないと、延々と空白が続き針を摩耗することになります。
レコードを集中して聴いていてもラインで連絡が来たり、郵便が届いたり気がそれるとあっという間にレコードが空転してるなんて事がしばしばあるのです。

フルオートレコードプレーヤーというのは、盤面をセットして「スタート」を押せば再生から停止まで全て自動で行ってくれるスグレモノです。こんなのもうCDプレーヤーと同じです。
フルオートでないプレーヤーはライカのカメラに似ています。ライカのカメラも、デジタルになった今でさえ電子ではない光学ファインダーを覗きマニュアルでピントを合わせて、絞りやシャッタースピードをセットしてシャッターを切ります。
ライカ愛好家はレコードに通ずるものがあります。

楽をしたい人はレコードに向いていない

「好きなアーティストの貴重な音源を速攻デジタルに起こしてiPodに転送したい!」というのであれば1万円以下のBluetooth対応の超入門機を買えば良いですが、上記の苦労を聴いても尚レコードを聞きたいというのであれば、フォノイコライザー非搭載の本格モデルがお勧めです。

つまりレコードプレーヤー以外にもフォノ対応のプリメインアンプとスピーカーが必要ということです。今どき欲しがる人も少ないのでオーディオ専門店に行けばオジサンたちが優しく教えてくれるので店舗で買うと良いです。
ただし、その時は自分が「フルオートプレーヤー」にするのか、そうでない楽チンにするのかは良く吟味しておきましょう。

最新の機材との相性は??

デジタルアンプや最新のスピーカーとの相性は良いとは限りません。私はB&Wの805D3PEという新しい技術が用いられたスピーカーを使っているのですが、レコードを再生するときは必ずコーラルの紙コーンのスピーカーでゆったり鳴らしています。新しいスピーカーやアンプは解像度を追求する余り細かな音を逐一拾っていく傾向にあります。
打ち込み音楽や精密な収録を前提にした近年の収録では、そのように再生する方の機材の精度も高い方が良いのです。しかしアナログレコードではそれが裏目に出てしまい、不要な音を拾ってストレスにしかならないのです。古い規格には古い機材、レコードプレーヤーは新しくても多少考慮されているはずなので別としても、スピーカーやアンプ選びは新しい物だけで構成しない方が賢明です。

またアンプとレコードプレーヤーを同一ブランドにしたほうが統一感があります。アンプをアキュフェーズ、プレーヤーをソニーなどでも良いのですが、両方デノンにしたり、両方オンキョーにしたり統一されている方が目に優しいような気がします。機材同士の相性も様々で、一概に音質には直結するとは言えませんが、機種選びの参考にしてみて下さい。

安い機種は修理不可能を前提に

今までデノンとソニーの古い機種を使っていたのですが、どちらも生産終了から20~30年。当たり前ですが修理用の部品など存在しません。世の中にはそうした古い機種を修理してくれる専門の業者もありますが、独自のノウハウで修理箇所を特定して、それに見合う代替パーツを確保したり、ワンオフで作ってくれたりするのです。そうなると本来メーカーであれば1万円で修理できる内容でも5万円、10万円になってしまっても仕方ないのです。

せっかくプレーヤーを2~3万円で入手しても故障しておしまい!では寂しいので、買おうとしている機種が修理可能なのか、オーディオ専門店で買えば保証が付くのか、その店である程度の修理は可能なのか、などを予め確認しておくと良いです。不安なようであれば現行品を選ぶことで、少なくとも数年間はまず修理が可能でしょうし、メーカー保証も付帯しています。

しかし私が個人的に思うには、多くの現行品は10万円以上するような高級機であっても木材の質が悪く疑問を持ちます。安い木材の突板や、ひどいと合板や木目調プリントなど長く使わせる気がないのかと問いたいくらいです。その中で唯一木材がマトモなTEACを購入したのですが、フルオートプレーヤーに慣れていた私が”レトロな一撃”を喰らったという訳です。

そんなこんなで、具体的な機種を上げてはいませんが、少しは参考になったでしょうか。
これでもレトロ最高!と思うのであれば、アナログレコード生活をスタートしてみて下さい。

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1989年 静岡市出身。主な執筆分野:ライフスタイル、旅行、料理、お酒。