ウェブマガジン リナシメント

ヨーロッパでは西ローマ帝国が滅びてから約1000年もの間、優れた古代ローマ・ギリシア文化の否定と破壊が行われていました。
結果として文化は単一化し、人間らしさが失われた《暗黒時代》と呼ばれる時代が続いたのです。
しかし12世紀にフェデリコ二世のパレルモ宮殿に生まれた自由な思想と、数々の困難から復活したイタリア諸都市のエネルギーが、世界に新しい風を吹かせました。
新たな鮮烈で立体的、そして生命力に満ち溢れた芸術や文化が次々と開花していったのです。
暗黒の時代が過ぎ去ろうとしていたあの14世紀半ば、突如としたボッカチオが書いた物語をご存知でしょう。光輝く草原の朝露のように瑞々しく、人間らしさとユーモア、そして感動に満ち溢れた「10日物語」です。

21世紀を生きる私たちは便利さを追求し、効率を重視した生活を送っています。高みを目指そうとしなければ、苦労も挫折もなく、それなりに暮らしていくことのできてしまう時代です。
しかし大量消費の中で人々の心は豊かになるどころか更に過激で暴力的なものを求め、退屈な日々を埋める無作為な遊戯ばかりが世界に流行しています。

私たちには文化があります。芸術、文学はもちろん私たちの大切な文化です。
しかし、ちょっとした生活雑貨でさえ、未だ実用性を犠牲にして美しさを求めていることは偶然ではありません。
いくら高機能な栄養食が生まれても、もし可能であるならば、私たちは美味しいものを食べ、奇跡のワインを探し、人の手が摘んだ紅茶を飲みたいと願うのです。

あの14世紀のルネサンスが「神中心の世界から人間らしさへの回帰」だったならば、この21世紀に「物質中心の世界から人間らしさへの回帰」のルネサンスを起こしたい。
そんな思いで、私たちは新しいウェブマガジンをルネサンスのイタリア語読みであるリナシメントと名付けました。
この物語が現代の「10日物語」となればそんなに嬉しいことはないでしょう。