ボローニャで購入したa. testoniのボストンバッグ。

存在感と格式のあるオールレザーのボストンバッグは、男なら一度は憧れたことのあるアイテムである。

リナシメント読者の中にも、すでに愛用している人もいるかもしれない。

しかしスーツケースやブリーフケースと違い、ボストンバッグを持つときにはある種の立ち振る舞いが求められる。つまりオールレザーのボストンバッグはそれが似合うシチュエーションで使うべきであり、そうすることで圧倒的にエレガントに見えるということだ。

重みさえもステータスとして考えよう

良いレザーは決して軽いものではない。オールレザーである限りはクラッチバッグのサイズであっても、そこそこの重さを感じるものである。

それがブリーフケースになれば、その重さはばかにならない。

そこでボストンバッグである。ボストンバッグの特徴に、サイズの豊富さがある。ブリーフケースの多くが横幅40cmなのは、A4書類(297cm)が余裕を持っていれられる黄金サイズだからだ。

しかしボストンバッグに決まりはない。日帰り出張の12時間サイズ(横幅40cm位)、一泊二日の24時間サイズ(横幅45cm位)、そして2泊3日の48時間サイズ(横幅50cm位)…。

必要であればボストンバッグはそれ以上にも巨大化していく。

その重さといえばもう、持ち上げただけでバッグ自身のハンドルが歪んでしまうほどのものである。

また写真のボストンバッグはアメデオ・テストーニのものだが、柔らかいレザーで中に物を入れなければ形が定まらない。レザーのボストンバッグには柔らかいものと、形の決まったものの二種類がある。持ち歩く時間が長いのであれば、形の決まったものが持ちやすいが、重量はそちらの方が重いことが多い。

柔らかく形の定まらないものは軽いが、中身をしっかりと入れるほど形が美しくなるのに、重いとバッグ自体が壊れたり伸びたりしやすい。

つまり実際にはどちらも、非常に便利とは言い難いものなのだ。

しかしオールレザーのボストンバッグというのは、その重さや不便ささえもステータスなのである。

実用性や機能性に身売りしたナイロンのボストンには決して敵うことのない本物のエレガンスが、そこにある。

オールレザーのボストンバッグで旅をしよう

もちろん小さなボストンバッグを日常使いするのも悪くない。例えばエルメスのヴィクトリアシリーズ、ロエベのアマソナなどは日々持っていてもお洒落なボストンバッグである。

しかしオールレザーのボストンバッグの使い道として最も良いのは、何と言っても旅である。

身の回り品をざっくりと全て詰め込んで行く度にボストンバッグはふさわしい。

とはいえ、実際にボストンバッグが非常に有用なのかと言われればそんなことはない。バッグ自体が重いうえ、そこに荷物を詰め込んだ後にチャンドラーの「長いお別れ」でもいれた日には、バッグは持ち上げられない重量になってしまう。

便利なのは圧倒的にスーツケースである。それも四輪キャスター付きのプラスチック製が一番良い。

ではどんなときにオールレザーのボストンバッグを使用するのか。

そう、車で旅するときである。

身の回り品や買ったものなどをバラバラと車に積んで行くと、ホテルで荷物を降ろす時にみっともない。しかしそんなときに大きなボストンバッグをトランクに何個か入れておけば、そこに全部の荷物をまとめられる。

自分のお気に入りの車のトランクからフルレザーのボストンバッグを下ろしてもらっているとき、それは実に愛おしい光景に違いない。

そしてそのとき美しいジャケットを着て、品よく磨かれた紐靴を履いていたとしたら。それは誰が見ても最高にエレガントな装いであること、疑いないのである。

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後天的イタリア人。 メンズファッション、車、オペラ等について執筆する兼業ライターです。 本業は田舎の洋服店。