レザーバッグというものは人の心を惹きつけてやまない。

しかし完璧な美しさを持つクラシック・フェラーリを所有し、さらに毎日乗って楽しむ人が非常に限られているのと同じように、有名メゾンの芸術的なバッグを普段使いできる人はごく僅かだ。

我々は赤い絨毯の敷かれた世界でオペラパンプスを履いて生活しているわけではない。むしろ、多くの人は無慈悲なアスファルトの上で過酷なレースをして生きている。ふれただけで崩れ落ちそうなレザーバッグは、あまりにも頼りない。

AUGUSTO ROMA アウグスト ローマのバッグはその点、従来のラグジュアリーメゾンのバッグとは一風異なる。

アウグストのバッグはいわば、毎日乗れるフェラーリである。堂々たる存在感とイタリアのクラフトマンシップを体現していながら、毎日使うことのできる力強さがあるバッグなのだ。

AUGUSTO アウグストの歴史

アウグストの工房がローマに開かれたのは、1950年代のことである。戦後のイタリアに復興の兆しが訪れ、町中に活気が溢れ、希望に満ち溢れた時代だ。

イタリア人が「美しい時代」と回想する1960年代。ローマの街中ではビスポーク(誂物)のスーツを来た紳士たちが闊歩し、光輝くフィアット・チンクエチェントが至る所で羨望の眼差しを受けていた。

アウグストのバッグは瞬く間に、エレガントな紳士たちの必需品となった。

しかし1980年代以降になるとイタリアに波乱の時代が訪れる。

中国製品はもちろんのこと、「メイドインイタリー」の中でも中国人経営の工場による大量生産が、伝統的なイタリアのクラフトマンシップを脅かし始めたのだ。創業者マルチェッロの二人の息子達が工房を継いだのは、まさにこのような状況下であった。

彼らは幼い頃から、アウグスト ローマの工房の中でレザーの香りと感触を体感してきていた。二人は伝統的なクラフトマンシップはそのまま継承しつつ、革新的なデザインを取り入れる道を選んだのだった。

トラディショナルな職人技術による堅牢な作りと、モダン・エレガンスを感じさせるデザイン。この二つの要素を実現したのは、アウグストの歴史そのものに他ならないのだ。

ローマ製という価値

イタリア製には価値がある。価値があるからこそ、からくりがある。

例えばイタリア産と言われるエクストラバージン・オリーブオイルの輸出量は、生産量を大幅に上回っている。それは多くの業者がアフリカやスペイン等から運び込んだオリーブオイルをイタリアでボトリングし、イタリア産と偽っているからだ。

なぜそんな面倒なことをするかと言えば、それだけ「イタリア産」という言葉に価値があるからだ。

バッグについても同じだ。イタリアには数多くのラグジュアリーブランドが存在し、イタリア製と謳っている。だが現実はどうだろうか?

フィレンツェから数駅のところに、住民の多くを中国人が占める街がある。伝統的に繊維業で有名なその街には8000の企業が存在するが、現在そのうち1500は中国系企業である。中国人所有で中国人が働くアパレルやバッグの工場が、所狭しと立ち並んでいるのだ。

それらの工場と取引があるブランドは決して公表できないが、そうでなくても公表しきれないほど多い。これが今のメイド・イン・イタリーの現実だ。

銀座の荘厳なブティックに並ぶアパレルやバッグには誇らしげにメイド・イン・イタリーのタグがついている。果たしてそれは本当に、イタリアと呼べるものなのだろか。

話をアウグストに戻そう。

アウグストの工房は創業当時から数軒隣に移ったが、相変わらずローマのアパルトメントの一室にある。

古い木の作業台と、使い込まれた工具と、丸めて壁一面に積まれたレザー。これはブランドではなく伝統工芸の世界だ。

働いている老練の職人たちは、カルボナーラとアーティチョークを食べて育った生粋のローマ人たちだ。創業当時からその小さな工房で働き、毎日バッグと向き合って生活している。

同じメイド・イン・イタリーの文字でも、その意味はここまで異なる。

アウグストがローマという文字を大きく掲げてローマ製という言葉を用いるのは、偽りのメイド・イン・イタリーへのアンチテーゼだ。

同時にローマ製はアウグストの職人達のプライドでもある。西欧文化の中心地であり、世界が羨望する歴史的都市ローマのバッグ工房。これ以上の枕詞を誰が思いつくだろう?

AUGUSTO アウグストの特徴

アウグストのバッグの最大の特徴は、なによりもメンズバッグを専門とするブランドであることだ。

フランスにも、イタリアにもバッグが有名なビッグメゾンはいくつも存在する。しかし多くが実質的なレディースブランドである。

レディース向けのレザーを用い、レディースバッグの「大きいサイズ」をメンズバッグとして扱うので、デザインも製法もあくまでレディース的だ。そのためハンドルが細長すぎたり、マチ幅がありすぎたりする。中性的過ぎて身長180cmの白人モデルには似合っても、我々のバッグとしてはいささか非現実的だ。まずBMI値が違う。

そして何よりも繊細なのである。もともと小さいレディースバッグに合わせたレザーや縫製、金具なのだからデリケートなのは当然だ。繊細さゆえの美しさも勿論、無視できない。だがデートへの期待とやりたくない仕事、この両方を入れて持ち運ぶには弱すぎるのである。

対してアウグストのバッグは、本質的なメンズバッグにモダンな(レディース的と言っても良い)エレガンスを取り入れたものだ。つまり他のブランドとは出自が逆なのである。

ベースとなるレザーは滑らかで上質だが、圧倒的に分厚い。毎日ハードに使い込んでも、柔らかさと雰囲気を増すばかりで、ダメージを感じさせない。ハンドルはしっかりと太さがあってやや短めなので日本人男性が持っても似合うし、堂々として力強さを感じさせる。

それでいてメンズバッグにありがちな野暮ったさが無く、デザインはラグジュアリーだ。マチ幅は薄めでスマートだが、しっかりと容量がある。逆に内部の収納は必要最低限で、書類よりもMacBookと充電アダプターを持ち歩きたい現代のライフスタイルにマッチしている。

先ほども書いたように、アウグストのバッグはいわば毎日乗れるフェラーリだ。イタリア製の美しさとエレガンスを持ちつつも、耐久性と力強さを兼ね備えている。

バッグは工芸品だが、身の回り品だ。毎日使えることに意味がある。

アウグストのバッグはどこで手に入る?

アウグストは素晴らしいバッグだが、まだ日本には正式に上陸したばかりだ。

逆に言えばこの値段で買えるのは今だけかもしれない。他ブランドのメンズバッグの値段を考えれば、アウグストのバッグが数年後に1.5倍以上の値段になっていても全く不思議ではない。

アウグストのバッグが欲しければ、アウグスト®︎公式オンラインブティックを訪れよう。詳細の写真とともに商品がチェックできる。

現在はCOVID-19の影響もあり受注生産限定となっている。納品まで1-2ヶ月かかるが、それが何だというのだろう? アウグストのバッグはこれから10年、20年と愛用できるのだから…。

アウグスト®︎公式オンラインブティック

 

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後天的イタリア人。 メンズファッション、車、オペラ等について執筆する兼業ライターです。 本業は田舎の洋服店。