暇つぶしに中古車情報サイトを眺めていると

2006年式のベントレー・コンチネンタルGTが300万円!
2005年式のマセラティ・クアトロポルテが148万円!

などなど、新車当時1500~2500万円だった憧れの輸入車が手頃な価格で売られていることがあります。
「なんか怪しいなぁ」と思いつつ中古車店に下見に行くと、「この価格で二度と出ませんよ!」とそそのかされ即日契約してしまった…。そんな人が多いのが高級中古車の界隈です。
そもそも必要のない高級車は、一種の陶酔感のような勢いがなければ実際に買うまでに至りません。

勢い余って元高級車を買うと、次から次へと発覚する整備必要箇所。
「トホホ、こんなに修理費が……」と維持費が苦しく二束三文で売ることになり、それを安く買い戻した店が再販する。そんなケースが跡を絶ちません。中古車情報サイトを慎重に見ていると、半年から一年前に売れたはずの特徴的な車が、同じ販売店から売りに出されていることがあるのです。

今回は中古の超高級車を買う時に、何を気をつければいいか解説してみます。

「病気持ちの子」を養子にする覚悟が必要

輸入車チェーン店でベントレーを購入した知り合いからこんな話を聞いたことがあります。彼は新車から4年落ちの高年式ベントレーを1800万円で購入したそうです。ところが、その店は売ることばかりに熱心で、まともに納車整備もしてくれなかったそうです。

走行中に「エンジン警告エラー」が出て12気筒中の何気筒かが停止するような緊急事態に陥っても電話に出ず、折返しが1時間以上後にくる。それだけでなくスイッチ不具合や、ワイパーブレードの交換さえ蔑ろにする始末です。
「買った店が悪い」この言葉で全て済ますことができるのですが、ここからが本当の地獄でした。

彼はお金が掛かっても良いから、ベントレーの正規店に持ち込んで面倒を見てもらおうと思い相談に行ったそうですが「他社で買った車はサポート出来ない」と正規店ディーラーにまったく相手にされなかったのです。
正規店ディーラーを訪れて「ナビとiPhoneつなぐケーブルが欲しい」と言っただけでも、「ちょっと無理ですねぇ〜」と軽くあしらわれるのです。そのショールームでわずか4年前に並んでいた車なのに酷すぎる対応です。

病気がちの子 筆者撮影

つまり、たった数年落ちの2000万円近くするベントレーを買う時でさえショップ選びは重要なのです。病気持ちの子供を養子で引き取る覚悟とともに、信頼のおける「かかりつけ医」が必要なのです。車が古くなればなるほどその傾向が強くなります。特に1990年~2000年の手頃な価格のベントレーやマセラティなどは、東京であっても面倒を見てくれるショップは極めて少ないのです。もし輸入車販売で有名なコ○○ズに入庫すれば、ちょっとしたオイル漏れでも整備代は膨れ上がり、簡単に車両購入費を上回ってしまうのです。

その彼の話によると、車検ではない1年法定点検でさえ100万円近くしたそうです。コ○○ズは庶民が無理して買った中古車ではなく、新車で何台も持っているような富裕層を対象としているので仕方のないことです。

御三家は購入店を気にする必要は無い

一般的に高級車とされているメルセデス・ベンツ、BMW、アウディの御三家は、ベントレーほど神経質になって購入店を気にする必要はありません。
70~80年代に製造されたような部品が絶版になっているものは別として、90年代以降の御三家(BMW、ベンツ、アウディ)は面倒をみてくれる店が数多くあります。もしその店で車両を購入していなくても優しく話を聞いてくれる傾向にあります。御三家は流通量が多いため部品やアフターパーツも豊富で、社外品を駆使して正規ディーラーよりも何割も安い価格で整備をしてくれるショップが数多くあります。

例えば「BMW専門店」と検索すれば、多くの都道府県で見つかるはずです。できる限りディーラーで認定中古車を購入するのを勧めますが、例え変な店で買ってしまったとしても面倒を見てくれる店が多いのです。ちなみにBMWは正規ディーラーも対応が良いです。愛車が故障して旅行先のディーラーに行ったことがあるのですが、他店で買ったにも関わらず丁寧に修理対応してもらえました。

古い高級車は絶対に専門店で買おう!

これは一例ですが、東京都調布市にあるベントレー&ロールスロイス専門店のシーザートレーディング。一度ショップにお邪魔した事があるのですが、1950年代のベントレーRなど旧車の数々を自社整備で販売しているのです。
半世紀前の車両であっても、自社工場で完璧にチェックをして不具合がある箇所は修理するようです。パーツの手配など難しい旧車が多く納車まで半年近く掛かるそうです。
シーザートレーディングは所有者のことを「一時預かり人」と呼び、丁寧に整備し優しく乗り、それを何十年後に売却したときに次の人が愛せる絵画や美術品のように、車は「一時預かり人」でしかないと考えているそうです。とても信頼できますし、乗るときの安心感が違います。

マセラティであれば横浜のミラコラーレがお勧めです。こちらはマセラティ・アストンマーティン・フェラーリ・ランボルギーニ専門店で、納車前に様々な箇所を整備して、部品の欠品時に自社製造してしまう事もあるそうです。同じ車両を何十台も取り扱っているような店は車の弱点やトラブルを把握していて、例え故障しても柔軟に修理対応してくれます。内装の革内張りや、スイッチのベトつきなども事前に解消したり少ないコストで快適な輸入車生活ができます。

この二件以外にも面倒見の良い中古車店は全国にあるはずです。見分け方としては、車種の傾向がある店。同一の車種、もしくは類似の車種を複数台扱っている店であれば修理が得意なはずです。
コンチネンタルGTだけで10台以上売っているショップを見かけたことがありますが、ここまで極端な店であればオーバーホールはもちろん、壊れやすい箇所の対策やスペアパーツ保管なども期待できそうです。

1台だけ浮いている店は避けよう

国産ファミリーカーの中にぽつんと1台だけ高級車が混じっているような店は、もしかしたら高級車の整備が苦手かもしれません。下取りなどで仕方なく並べている、という事もあるからです。
その場合は商談するときに「故障したときは整備してもらえますか?」と確認しましょう。自社整備でなくとも、知り合いにイタリア車専門店がいて紹介できる、というケースも存在するからです。
病院のアテがあるのなら安心して乗ることができます。「うちではちょっと……現状販売です。」という店であれば避けたほうが良いです。

高級車の中には特別仕様車や、そもそも日本に数台しか存在しない車種もあります。どうしても欲しい希少車を見つけてしまったのであれば、専門店に「業販で取り寄せてもらうことはできませんでしょうか?」と見つけた車について先に相談するのもありです。「手数料が上乗せされて良ければ面倒みるよ」「いや、そもそも無理だよ」など対応はまちまちですが、中には自社販売した車のように面倒を見てくれる専門店も存在します。

超高級車(中古車)のオーナーになるというのは…

「買ってから考える」とにかく、これだけは絶対に避けるべきです。
超高級車は買ってからが本番です。鍵を回すときエンジンが無事につくように祈り、外出中もエンジンから火が出ないように祈ります。
私がある英国の超高級車を借りて高速道路で運転中、エンジントラブルに見舞われたことがります。そのとき、同乗者に「もしも煙が出たら路肩に停車するから、慌てずにドアを開けて降りてほしい」と説明したことがあります。幸いにも火災は起こりませんでした。

国産車の火災はまず起こりませんし、ドイツ御三家もなかなか燃えません。(ポルシェは例外的に燃えますが)数千万円以上する高級車は生産台数も少なく、手作りのボディに大排気量のエンジンを載せていることも多いので、不慮の事態に陥りやすいのです。
リナシメントの某ライターが所有していた初代マセラティは、車内が常にガソリンの揮発した匂いで充満していました。彼いわくガソリンホースの取り回しが悪く、ちょっと漏れているとのことでした。

とにかく超高級車ほど経年劣化で病気になりやすく、2000年以前のモデルは致命的な持病を持っていることが多いのです。ビトゥルボ時代のマセラティなんかは所有している時間よりも、修理に入庫している時間のほうが長いと言われるくらいです。オフ会なんかは必ず数台は故障する車が出て、みんなで助け合って駐車場で修理するなんて逸話もあります。

とにかく英国車でもイタリア車でも超高級車のオーナーになるというのは覚悟が必要で、ちゃんと面倒をみてくれる専門店を見つけることがクルマ生活の一歩です。

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1989年 静岡市出身。主な執筆分野:ライフスタイル、旅行、料理、お酒。