「夏真っ盛り!」本来であれば、そんな時期なのですがコロナの自粛生活ですっかり夏が失われてしまった感じがします。

田舎の夏といったら欠かせないのがバイクです。私が10代の頃は信じられないほど長い時間をバイクに乗って過ごしました。バイクというのは田舎でこそ最大のメリットを享受できます。行き先が無くとも山や海、海岸線沿い、目的地が無いツーリングも楽しかったりするものです。暇つぶしにダム巡りなんかをしたこともありました。

大排気量ほど楽しいのは本当?

私は16歳に50ccの原付きから始め、カワサキZRX-2(400cc)、ゼファー1100(1100cc)、ゼファー750(750cc)と排気量をステップアップしていき、ZRX-1200DAEG(1200cc)まで乗り換えて所有していました。

やはり一番の感動は50ccから400ccに乗り換えたときです。「本当に合法で乗っていいの?」と思えるほどに溢れ出るパワーで、スロットルを開けるのに緊張感があり、加速はエンドルフィン(脳内麻薬)が出てるんじゃないかってほどに興奮します。原付きの7.2馬力から53馬力にアップしたというのもありますが、車線も自由に走れて制限速度も車と一緒、高速道路なども自由に乗れるという開放感もあり、飽きること無く4万キロほど乗りました。

18歳過ぎて大型自動二輪免許も試験場で一発試験で受けたのですが、大型バイクに乗った時のインパクトはあまり無く、「あぁ〜やっと大型の仲間入りだな〜」というコンプレックスの開放という感覚がほとんどでした。中型バイク乗りのなかには私と同じように大型バイクへの憧れからか「中型は大型バイクの妥協」「中型自動二輪しか取れない」「子供用」といったような漠然とした劣等感がつきまといます。とくに誰が言ったわけでもないのですが、旅行先などで隣に大排気量が停車するたびに羨んでいたように思います。やはりオートバイメーカーの各社フラッグシップモデルは1000cc超えの大型バイクでしたし、BMWやハーレーダビッドソンなど中型自動二輪免許では乗れるモデルが(ほぼ)存在しないというのも、その印象を与えるのには充分でした。

コンプレックスから大型バイクを買った?

そういった経緯があり大型自動二輪免許を取ってすぐに400ccを売り払い、大型自動二輪でしか乗れない1100ccを買ったのですが、思ったよりも感動は乏しかったです。ゼファー1100はカワサキ ボイジャーという1980年代にルーツを持つ設計で古く、今どきのネイキッドのようなキレのある走りは実感できません。ツアラーバイクのように、ゆったりと旅行に出るような遅いバイクでした。18インチというホイールの大きさから峠道でカーブを曲がるときにも400ccより遅く車重もあり、走る気持ちよさは少なかったです。

友人が所有していたスズキGSX-1300という、スーパーカー級の加速のバイクに借りて乗ったときはさすがに400ccとは雲泥の差でロケットや新幹線みたいという凄まじい感覚がありましたが、ここまでくると自分の腕では操りきれないというオーバースペック感がありました。フルスロットルにすると時速100kmまで2.6秒という怒涛の加速で、常に神経を尖らせていないと危険な感覚がありました。

その後しばらくしてゼファー750という中間の排気量モデルを買ったのですが、軽くてコンパクトちょうど使い切れるパワーで心地よかったように思います。今では少ない空冷4発750ccで加速は400ccの水冷エンジンとほぼ同等という「遅い大型バイク」でした。半年後にマツダRX-7というスポーツカーを買って、しばらく車にドハマリしたのでバイクは離れていました。

大型バイクの1200ccは速すぎる?

26歳のときに久々にカワサキのZRX-1200DAEG(1200cc)を購入したのですが、やはり速すぎてしっくり来ませんでした。新しいバイクなだけあってフレームもエンジンも最新設計でフェールインジェクションでアイドリングも安定します。
ボディ剛性も高く、以前のゼファーと比べるとはるかに完成度の高いバイクなのですが、110馬力は公道では速すぎて力を持て余します。パワーウェイトレシオという出力重量比で加速能力を求めることができるのですが、車両重量246kgでは2.2kg/PSと日産GT-Rの2.867kg/PSよりも一馬力当たりで動かす重量が軽いことになります。

二人乗り+キャンプ用品など、重量がある旅行であればこの有り余るパワーを有効活用できますが、一人での街乗りや日帰りのツーリングだと、パワーがありすぎて常に低回転を使うので運転していて楽しくはありません。
ZRX-1200DAEGに乗っている満足度はありましたが、運転していて一番楽しかったのは400ccだったような気がします。しっかりエンジンの回転数を上げても速度が出すぎず、それでいて遅すぎないという絶妙な心地よさが400~750ccのネイキッドバイクにあるように思えます。

一周回って中型バイクが楽しい

それから東京に引っ越してバイクは乗っていないのですが、スズキの隼やカワサキのZZR1400など具体的な憧れのモデルがなければ中型バイクで十分楽しいはずです。ただ私は30代になってしまったので、やっぱり750ccかZ900RSのような900ccかな?と迷うところもあります。何歳で何ccに乗っていようと本当に自由なのですが、もともと中型・大型バイクというのは不要不急の趣味の乗り物なので、自分や他人の作ったイメージというのが付きまといます。

実際に今は全国的にバイクの低迷期なので、「え?大人なのにバイクに乗ってるの?」という子供っぽさというか、やんちゃというか、やはり周りのイメージに影響されます。スポーツカーでさえ風当たりが強く若い世代さえ憧れないので、さらにバイクというのは男臭く世間から遠いものになっています。とかくここまで来たら、何ccだろうと好きなバイクに乗るというのが一番といえそうです。

バイクは大きければ偉い、大きいほど良い楽しいというものでなく、乗り手の求めるものが何かによって変化します。大型バイクを何台も乗ったライダーが、年を取って50ccのカスタムにハマるというパターンもとても一般的です。これがバイクの排気量や値段と実際の楽しさが釣り合わないという面白さでもあります。

都内でバイク駐輪できる場所はない

東京に引っ越して3年目になりますが、(都心5区は)完全な自動車社会になっています。久々にバイクに乗りたいのですが駐輪場がありません。公営駐輪場などのバイク専用駐車場がところどころ設置されていますが、麻布十番や渋谷などの一部だけで場所が少なく、目的地があっても停めてから歩いて移動しなければなりません。通称みどりのおじさんと呼ばれる駐車監視員は繁華街だけでなく、店が少ない住宅地の裏路地まで回り厳しく取締をしています。そのお陰で迷惑駐車が少ないのですが、例え喫茶店でコーヒーを飲んでバイクに戻ろうものなら黄色い「駐禁ステッカー」を貼られ6,000円~10,000円の高い反則金を支払わなければならない目に合います。
それだけでなく、多くのマンションに駐輪場がありますが自転車用になっているということです。バイク用駐輪場のついているマンションは少数派で、あっても原動機付自転車や125cc以下のみという制約があります。月の賃料が50万円以上もする高級マンションであれば、世帯が100戸に対して2~3台スペースを確保していることもありますが、月極駐輪場も少ないのです。駅の近くに合いた土地を利用してバイク駐車場を提供している業者もありますが、月に5,000~15,000円といった驚くほど高い賃料で車検の積み立てよりもコストがかかります。やはり「家にバイクを置く」ということをクリアするだけでも一苦労なのです。

地方都市であれば店舗も広いことが多く、敷地内に停めれば合法的に無料で駐輪できます。そもそも田舎であれば店の前に駐車しても切符を切られることはまずありません。観光名所にも無料駐車場が多く、美術館や図書館をはじめ自由に停めれるスペースがたくさんあります。
静岡で私が住んでいた小さなマンションも駐輪場がありましたが、何台でも自由に置いていいという非常に緩いルールでした。ざっくり車3~4台分のスペースを白い線で「自転車・バイク」と書いてあり、そこにマンション住民がおのおの停めるというルールです。近所の小さめの学生向けアパートには駐輪場が不足しているので、路上に何台も原付バイクが停まっているのですが数年間一度も駐禁ステッカーを貼られていませんでした。田舎の良さは、自宅から目的地まで一直線で乗れる、しかも駐輪は無料というルールのため自転車のように利用できます。

早いうちにリターンライダーになろう?

私自身バイクに4~5年ほど乗っていないので他人にいえることじゃないのですが、数年乗らないだけでも運転技術は驚くほど落ちています。反射神経やバランス力もほとんどの人が若い頃にピークを迎えて、年を取って落ちるばかりです。
200キロ前後の車体をちゃんと自分で起こしあげれないと運転は難しいので筋トレも必要ですし、慣れていないと長距離ツーリングでは全身が筋肉痛になるはずです。そんなわけで、いつか乗ろうと思っているひとは早いうちにリターンライダーになるのが良さそうです。

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1989年 静岡市出身。主な執筆分野:ライフスタイル、旅行、料理、お酒。