オランダやベルギービール、どこがグラスを作っているか

まだらの牛

オランダでビールを飲むうちにグラスが気になってきました。グラスの形状などもそうなのですが、ある時、グラスのメーカー名が刻印されていることに気が付きました。何度か同じ名前に出会いました。

Ritzenhoff

この名前が印字されていることが多いのです。例えば、リナシメントで旅行記を書きましたが、オランダの南東部にあるマーストリヒト(Maastricht)という町に行った時のこと、Maltezerというビールの醸造所付属の居酒屋で飲みましたが、その時に出て来たグラスがこのRitzenhoffのものでした。

オランダやベルギーには無数に見えるほど多くのビールのブランドがあります。それぞれのビールが、それぞれのスタイルに合わせて自分たちだけの形状とブランドロゴがプリントされたビールグラスを持っています。われわれ一般の消費者はよほどのビールファンでもない限り、自宅でそうしたグラスを所有しようとは思わないわけで、それらは主に飲食店向けのものです。好きなビールのブランドがあって、そのグラスが欲しいと思えばネットなりで簡単にまた手ごろな値段で買うことも出来るのですが、普通はそこまでしないでしょう。

私もビールが好きとはいえ、家にそうした各ブランドのグラスを集めるほど熱心ではありません。コレクター心をくすぐられはするのですが、アメリカに長く住んでいた知人がいて、その人が各ビールメーカーのコースターを集めていて100ぐらいはあったけど引っ越しで捨ててしまったという話を聞いて、なんだかコレクションっていうのはむなしいなと思ったりもし、それぞれ少額とはいえお金を出して集めるというほどの踏ん切りはつきません。

しかしタダで手に入るとなれば話は別です。スーパーで販促としてグラスが無料でついてくることがあります。そうやって最近二つのブランドのグラスを手に入れたのですが、そのグラスにもまたRitzenhoffの文字が。


Ritzenhoff…一体何なんでしょう。

Ritzenhoffとは

リッツェンホフ(Ritzenhoff)はドイツの家族経営のグラスメーカーです。年間に5000万ものグラスを生産しています。ヨーロッパで唯一、すべてのサービスを自社で賄っていると謳っており、デザインから生産、飾りつけ、倉庫、流通に至るまで自社で行っているそうです。

しかしみなさん、このメーカー、聞いたことがありませんよね。一般に売り出しているのではなく主にレストランやホテルなどに卸すグラスを生産しているからです。

作っているグラスはクリスタルグラス。といってもリナシメントでもよくご紹介されているサンルイだとかヴァルサンランベールといったメーカーのような鉛が入ったクリスタルではありません。鉛は危険性が指摘されていることもあって、昨今では好まれていませんね。例えばポーランドで手仕事で作られているLSA Internationalやそれよりぐんと値は張りますがチェコのArtělといった新興のグラスメーカーでは鉛が入っていないということをアピールポイントにしています。

このリッツェンホフも同じことでクリスタルといってもいわゆるカリクリスタル。けい砂、酸化カリウム、硝酸カリウムが1500度で煮立てられクリスタルガラスになります。

工場はRitzenhoff AGという名前で、一番近い有名な都市はドルトムントですかね。

北にハノーファー、西にドルトムント、南にフランクフルト、それらのちょうど真ん中らへんに位置しています。

そうそうたるビールメーカーに採用されている

さて、このリッツェンホフ、数多くの有名なビールのブランドに採用されています。ドイツのビールはもちろん、ベルギービールのブランドが目立ちます。アフリヘム(Affligem)、シメイ(Chimay)、デュヴェル(Duvel)、レッフェ(Leffe)といった名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。

リッツェンホフの公式サイトから引用(https://www.ritzenhoff.com/en/ritzenhoff-cristal/products/beer/)

もちろんオランダビールにも採用されていて、アムステルダムの大衆ビール、アムステル(Amstel)や王様っぽい人物が泡立つジョッキを乾杯するように突き出しているロゴが特徴的なヘルトホ・ヤン(Hertog Jan)のグラスもここで作られています。

私がスーパーのおまけで手に入れたものはひとつはオランダのもの、ひとつはベルギーのものです。オランダのものはリナシメントでもご紹介したことのあるヨーペン(Jopen)のグラス。

もうひとつはベルギーのコルネ(Cornet)のものです。

こういう販促のビールグラスを比べてみるのも面白くて、ヨーペンのはコルネのものに比べると大分小さいです。ヨーペンのは250mlの線があるだけで、こちらで一般的な300とか330mlの瓶の中身を入れると丁度一杯になるようにできています。コルネのは330ml、500ml、さらには一パイントの線があり、かなり多くの容量が入るようになっています。コルネも330mlの瓶で売られていることが多いのでどうしてこんなに容量の多いグラスが用意されているのかは上の写真を見ていただければ分かります。注ぎ方にもよりますが、泡が多いのです。もっとも、330mlの瓶を二本注ぐためなのかもしれませんが(ちなみにコルネはアルコール度数8.5%あります)。

いい音

クリスタルなのでいい音がします。透明度も高いと思います。しかし土台(プレート)などに継ぎ目があるので少し安っぽくは見えます。

縁(リム)の薄さは

ビールでもワインでもウィスキーでも口に当たる縁の薄さが重要であるとされています。薄くすればするほど割れやすくもなりますし、技術力も必要となりますので、安いグラスではあまり薄い縁は見られず、よいグラス(装飾用ではなく飲み物を楽しむためのものとして)の一種の重要な判別ポイントと言えます。

このリッツェンホフのグラスは大量に飲食店なりビールメーカーなりに卸しているわけで決して高くはないはずですが、ビールメーカーは自分たちのビールがより美味しく味わわれることを望んでいるので、それなりの薄さが実現されています。

サンプルがコルネとヨーペンのものしかないのですが、ふたつはまったく同じ薄さのようです。計ってみたところ、ちょうど1ミリでした。参考までに家にあったヴァルサンランベールのリースリンググラスとクープグラス(モデルMery Esneux)、リキュールグラス(モデルOreste)の縁も計ってみたところ、同じく1ミリでした。個人的にはこのくらいの薄さで十分口当たりがよいと思います。

手前がヴァルサンランベール、奥が左からヨーペン、コルネ、シュピーゲラウ

1ミリ以下にする必要が果たしてあるのかどうかはよく知らないのですが、家にはそれ以下のグラスもあります。シュピーゲラウ(Spiegelau)のビールグラスです。正確に何ミリなのかは分かりませんが、測ってみると1ミリよりわずかに小さい。0.8ミリくらいに見えます。

*比較写真も撮ってみましたが、いまいち分かりづらいものしか撮れなかったので載せていません。

確かに薄いと口当たりはよい。シュピーゲラウのもののあとにリッツェンホフのものを口に当てるとはっきりと違いが分かり、ああ、1ミリ程度ではまだまだ粗野な口当たりだったんだなと感じます。しかしそれは比べてみた時の話で、単独で口に当てれば別に気になりません。Ignorance is bliss(無知は幸いなり)で、誰かがグラスの縁は薄ければ薄いほどいい!と叫びたてなければ自転車のタイヤぐらいの厚さのグラスでもきっと自分は満足して使っていたと思います。

結論

このまとまりのない記事に突然結論を持ってきたいと思います。私が伝えたいのはもし読者の方がオランダなりベルギーなり、ドイツなりを訪れて飲食店でビールを飲む際はぜひグラスに注意してほしいということです。そこにはこのリッツェンホフの文字が見えるかもしれません。あるいはベルギーとオランダのAyanoという企業もなかなかのシェアを誇っているようですので、そちらのものを見るかもしれません。Ayanoの名前は日本語由来で、’design’や’color’を意味していると公式サイトにはあるのですが、「彩の」ということだろうか。さらに日本関係でいえば、キッコーマンの醤油瓶作ってるんですって。

これはユトレヒトのカフェで飲んだ時の写真。Ayanoのグラスです。

そして、各ブランドのグラスを集めるというのも面白い趣味でしょう。しかし期待しすぎないように。美味しくビールを飲みたいだけなら(もちろん、そのブランド専用のグラスで飲むという気分も大事ですが)、シュピーゲラウなりなんなりのビールグラスを買っておいたほうがいいです。縁も薄くて、またそれぞれのビールのスタイルに合わせた形もある程度は出そろっているので、重宝します。それに土台に継ぎ目もありませんし。

Ritzenhoff

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