東京は素晴らしいところですが、車には恵まれていません。六本木通りを西麻布で曲がり外苑西通りに向かうと、ランボルギーニやマセラティ、マクラーレンの正規ディーラーが密集し、夜になると何十台ものスーパーカーが路上に並びます。
しかし、まともに走れる場所が無いのです。同じように”BMW Group Tokyo Bay”はお台場にあるBMWの最新モデルを全て集約した施設です。ですが試乗コースは公道しかなく最新のMモデルにいくら乗れると言っても最高速度60km/h、これでは違いも分かりません。

内装や外装、質感などは近くで分かるのですが、「結局走ってみてどれがいいのよ?」という疑問を解決するのは実際にサーキットで飛ばすしかないのです。富士スピードウェイで開催されたBMWのイベントに参加して贅沢にもM850i / Z4 M40i / M2 Competitionの3車種に試乗できたので、実際にMモデルはどれが良いかお教えします。

BMW Mモデル選びの難しさ

4年前のBMW DRIVING EXPERIENCEではM4,M6,M135を本コースで走行したので、現行のほとんどのMモデルを富士スピードウェイで体験できました。

そこで気づいたのがMモデルの奥深さと、愛車選びの難しさです。先日の記事「8年前のBMW 640iは富士スピードウェイで戦えるのか?」では古いノーマルのBMWで、どこまでサーキット通用するかを執筆しました。
ノーマルのBMWでさえサーキット走行でパフォーマンスを発揮できるのです。先ほど挙げたモデル名の最初にMが付いている車種は高い完成度を誇ります。

そして安易に価格の高い車種が素晴らしいという訳ではないのが奥が深い理由です。多くの人は、こう考えるはずです。
「870万円のM2 コンペティションよりも1,700万円のM850i xDriveの方が絶対に素晴らしいに違いない」
始めは私も同じことを思っていました。確かに絶対的なスペックで言うとM2からM4、M6と車格が大きく、価格が高価になっていくほど馬力や性能が上がってゆきます。

しかし驚くことに実際に試乗してみるとモデルによってキャラクターが異なり、全く別の印象を受けます。

BMW M850i xDrive クーペ

以前、東京ベイで舐め回すように外から眺めた新型8シリーズ。その時は試乗車も1台も無く完売で、内装を見せてもらうことさえ叶いませんでした。
しかし今回はM850iも試乗の対象で、早速乗り込ませてもらうことに…。
インテリアは正直に言うとイマイチです。

良く注意してインテリアを見て下さい。昔のアストンマーチンのようにセンターコンソールが大型で内側に回り込むようなデザインになっています。先ずは画面とコンソールの形が合っていません、次にエアコンの吹出口のデザインが左のドアと連動していません。その次にマルチファンクションボタンが台形でありながら、下のミュージック関係のボタンは逆の形になっています。線のつながりも意識されていません。
ドリンクホルダーの素材感が内装と合っていませんし傾斜が付きすぎています。

操作系ですが、エンジンスターターボタンが中央にある設計です。シフトレバーの右側の円と分かりにくい場所にあります。ここにアイドリングストップオフやスポーツモードなど集結せさてあります。
左にはメディア&ナビのコンソールがありますが、どのボタンも目で直視しないと何を押しているか理解できにくい場所にあります。

クリスタル風のシフトレバーもお世辞にも格好良いとは言えず、インテリアもユーザビリティも低いと言わざるを得ません。「でも走りはピカイチでしょ?」そう思い走行テストに入ります。
M850iの足回りは64oiと比べても柔らかく靭やかで段差を超えても衝撃を感じません。しかしベントレーやメルセデスのそれとも違う柔らかさで、どちらかと言うとアウディのA5のような柔らかさと言えます。
走り出すと低速トルクが湧き上がって来るのを感じさせます。76.5kgmを1,800rpmから出す超低回転型のエンジンは4,600rpmでピークを迎えます。

マニュアルモードで走行して1速のままレッドゾーンまで加速してコーナーに入ります。全輪駆動の素晴らしい接着感でグイグイボディが曲がりマジックのようです。しかし、この時頭の中で疑問が湧き上がりました。
「これとても速いけど楽しいのか?」
以前にも同じ疑問が起きた時があり、それはテスラのモデルS試乗の時です。P100Dというグレードで、時速100キロまでわずか2.6秒というフェラーリクラスの驚異的な加速力です。M850iも時速100キロまで3.7秒というスピードです。

この加速感というのが大型バイクで加速した時のようなリアタイヤから湧き上がる力というものではなく、ジェットコースターで箱が急に動き出したという感覚です。単純に”速さ”という結果を出すには最適でしょうが、つまらないという感想しか得ることが出来ませんでした。
中でも致命的なのが5,500rpmで馬力のピークを迎えるエンジンです。M4であれば431馬力を7,300rpmで、先代のE92 M3であれば8,300rpmでピークを迎えます。低回転型がダメなエンジンとは言いませんが、M850iは官能的とは言えないフケないエンジンなのです。

快適で乗りやすく、扱いやすく、パワーもあり速い。それでも「運転して気持ちが良いか?」と聞かれればイエスとは言えません。M8になれば別物に化けるかもしれませんが、現状ではそれが答えでした。

写真のM850i カブリオレの方はインテリアカラーはいくらか良くラグジュアリー感はあります。
ただ2000万円近く出すのであれば、ベントレーの新型コンチネンタルGTの方が格段と質感は高くデザインも満足できるものです。特に1シリーズと似た形のナビが収納することさえ出来ないというのは美的感覚を疑います。スポーツとラグジュアリーを両立しようとして上手くいっていないのでは?と思います。

Z4 M40i

トヨタと共同開発されて、先日新型スープラが発表されたことはご存知かと思います。デザインに関して言えることは「好きな人にはたまりません」
以前テレビ局のアナウンサーと話していた時、飲食店の取材で不味い時はなんて言うんですか?と尋ねた時に、この言葉を教えてもらいました。

手前の顔も整っていないので、言及するのはここまでにして走行性能に移ります。
このM40iは0-100km/hの加速が4.5秒とやや俊足です。しかし先ほどのM850iのようにモーターのような感覚が強く、テスラのオープンカーにでも乗っている気分です。
ハンドルはマイルドですが、1速で全開までアクセルを開けるとリアから蹴飛ばされる感じがあります。

何というか、もし富士急ハイランドのドドンパを自分で操作できたら、こんな感じかな??という感想です。
残念ながら私はジェットコースター苦手で乗ったことはないのですが、加速が今までのBMWとは全く異なる感覚です。

しかしM850iと同じように速いはずです。狭い峠などでは驚異的な存在となるはずです。私は生まれて初めて乗ったBMWがE92クーペの320iで、それを親だと思っているので新型Z4は方向性が結構変わったなと実感しました。
E89のZ4は当時のE92にボディの挙動やエンジンの特性が似ていて、「兄弟」というのを強く感じました。

今回はどうやらZ4はM850iと兄弟と言っても過言ではありません。エンジン排気量や気筒数、駆動方式など異なりますがそれを実感しました。
インテリアの感想は特に無いのですが、1700万円するM850iのインテリアが560万円のZ4に付いてきます。

部品の共通化は合理的ですが、何か思う事は無かったのでしょうか?
Z4は良いとしても2000万円近い自動車は、せめてこのようなデザインと独自設計で合って欲しいですネ。

M2 Competition

6シリーズに乗っている私は今まで「デカければ偉い」と思っていたので、一応乗っておくか…という気分だったのですが、試乗して驚きました。

1速にしてアクセルを全開まで踏むと、荒々しいエンジン音と共にリアタイヤで背中を蹴飛ばされます。
高回転まで上がり、加速を続けるM2は最高!という感想しかありません。加速が心地よく、ハンドルはシャープで切った方向にすぱっと曲がり、血湧き肉躍る、全身の細胞が喜んでいる感じです。
さすがに褒めすぎですが、M4をコンパクトにした感じが痺れます。M4でさえコンパクトな戦闘機といった感想でしたが、更にホイールベースが切り詰められて真の大人の玩具を完成させた感じです。

総合的な性能で言えばM850iの方が富士スピードウェイでは速いと思いますが、今日一番乗っていて楽しい!と感じるのがこのM2コンペティションでした。
欲しい!持って帰りたい!と強く思ったほどで、カワサキの大型バイクのような荒々しい加速と、良く研いだ鋼包丁のようなハンドリング、完全に惚れました。

唯一の欠点を言えば外見のデザインが余りカッコよくない事と、車格が小さすぎること、車内が狭すぎること、あとインテリアの質感がイマサンなことです。今どきトヨタでももうちょっと質感良いぞ!と思いますし、これならマツダのほうがデザインと質感高そうです。乗ったことないけど・・・。

どのMモデルを買えばいいか

おじさんだし楽したいよ→M850i
カッコよくて速いのが欲しいよ→M6
家族が居るけど妥協したくないよ→M5
運転して最高に楽しいBMWがいいよ→M4
家族が居るけど乗り心地と騒音気にしないよ→M3
峠やサーキットでバリバリ楽しみたいよ→M2コンペティション
最高のコンパクトファミリーカー欲しいよ→M135i/M140i

これが様々なMモデルに乗って出た結論です。

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1989年 静岡市出身。主な執筆分野:ライフスタイル、旅行、料理、お酒。