こんばんは、はっしーです。本日は高原に滞在中で久々にゆっくりと山で過ごしています。
やはり標高1000m近い山脈から引かれる水は本当に美味しいです!様々なミネラルウォーターを試していますが、汲みたての山の水よりも美味しいものはありません。
そしてウイスキーも持ち込んでテイスティングしているのですが、都内で飲むのと高原で飲むのとで若干味が異なります。恐らく空気の感じと、標高が高いため気圧が低く中耳の影響があるからでしょうか。水も97度で湧いて、コーヒーや紅茶のニオイも海抜0メートルとは異なります。

さて、本日の特集はアラン10年。実は一ヶ月ほど前に大人本に匿名でこんな書き込みを頂きました。

最近のアランは良いですね。20年からボトルとラベルが変わるので、質が維持されるかどうかは分かりません。今のうちに好みの味わいの旧ボトルを買っておくのも良いと思います。(匿名)

今からウイスキーを飲まない方がいい理由とは」で、近年のウイスキーの味が劣化したと書いたのですが、読者情報によるとアランが美味しいとのことで早速購入してみました。筆者は今から10年程前にウイスキーにドハマリしたのですが、その時はアランはまだ日本には殆ど来ていない状態で、存在を知りませんでした。勿論ジャパニーズウイスキーも低迷期で山崎12年や響12年も4980円で売られオーナーズカスクも1~2万円で買えたような状況でした。

アランモルトとは?

スコットランドでも新しい蒸留所の一つであるアランは1995年に設立しました。エジンバラから西に100マイルの「アイランズ(島々)」と呼ばれるエリアにアラン島があります。アイランズは「アイル・オブ・ジュラ」「スキャパ」「タリスカー「トバモリー」「ハイランドパーク」「レダイグ」などがありますが、アイラの塩っぽい特徴を持ちつつも内陸的なニュアンスもあり非常にバランスの良いウイスキーです。

1995年に蒸留所が作られて操業開始、10年物が出るのが2005年、21年が出るのが2016年と平成初期に作られた蒸留所のウイスキーも今になってやっと長期熟成の素晴らしいウイスキーが出てきたと言っても過言ではありません。
そしてコメントで知ったのですが、そのアランが中核のシリーズを全て2020年1月に新ボトルに移行したというのです。ウイスキーというのは年々少しずつ味が異なるものですが、中でもラベルの変更やボトルのエチケットの変更は大きく味の方向性が変わるのが常です。マッカランやボウモア、タリスカーなども新ラベルになって劇的に味が劣化した経緯があります。

そこでアラン10年の新旧ラベルを買って、同時に抜栓してテイスティングしてみました。バーなどでも比較はできると思いますが、抜栓日が異なると香りの開き方が異なるので厳密に状態を比較するのには向いていないのです。同時に抜栓して、当日・翌日、一週間後、一ヶ月後と比較するのが純粋に比較できるのです。

ボトルのデザインが大幅に変更されて、新ボトルはスタイリッシュになりました。ボトルの形もウイスキーというよりはオシャレな雑貨屋さんにありそうな丸っこいデザインになっています。またフォントも変更されてTheとMaltが取られてアップルのパッケージのようになりました。点字まで印刷されてバリアフリー化されています。

個人的には新しいボトルのデザインは好きで、どんな部屋にも似合いますし、女性の部屋にあっても素敵だと思います。旧ボトルはいかにも”ウイスキー”然としてフォントも90年代を感じさせますし、古臭いイメージがあります。渋いバーに並べるのであれば旧ボトルの方が似合うはずです。

ウイスキーの色合いは旧ボトルの方がわずかに濃く、シェリーの色が効いているように思えます。新旧ともにノンチルフィルター、ナチュラルカラーなので着色されていない天然の色です。どちらも輸入元はウイスクイーです。美味しい輸入ウイスキーと言えば”ウィック”と”ウイスクイー”は外せません。
旧ボトル 3,450円 新ボトル 3,663円 どちらもアルコール度数は46度、容量は700mlです。

アラン10年 新ボトルと旧ボトルの味の比較レビュー

早速、二本の味わいを比較してみます。

〜抜栓直後 初日〜

旧ボトル
海藻、ゲランのアーモンド、時間経つとヨード系、10分程でシェリーが少しずつ出てくる。
ややシトラス系?アルコール感薄く優しい、昔のカリラに似てる、カリラからピートを抜いた感じ。

滑らかスムース、カーフレザーのような革のニオイ、樽の香りがあるけどきめ細かい。
15分ほど経つとソーテルヌカスクなどと共通の香りが残る。
コクが強く全盛期のタリスカーのような旨味がしっかりと有る。昆布のような旨味があるので日本人にとっては美味しいと感じやすいはず。

新ボトル
樽香が強い、熟れたバナナ、果物、時間経つとメロン。薪割りをしたときのようなフレッシュな木のニオイ。
エタノールのようなアルコール感が強い、荒々しい、時間経つと少し落ち着く。香りも味もやや雑で焙煎したカカオまたはコーヒー系

〜抜栓直後 翌日〜

旧ボトル
ピートとフルーティーのバランスが良い、まるでカスクストレングスのような香り。
シェリーの甘さが全面に出る、柔らかい、旨味が凝縮している。餃子の肉牛のように旨味の侵入。
アイランズモルトなのに旧マッカラン系の良質なシェリーの香り。

新ボトル
ピート感は乏しく、新樽のようなウッディさ。水割りにすると二時間後のバランタイン17年みたいな甘さ。
小規模の演奏、昔のタリスカーみたいな塩っぽさ。

水割りにすると確実に旧ボトルの方がうまい新ボトルはコクがないので薄まる。
同じ水の量でも全く味が異なる。のっぺりする。香水を混ぜたような。
旧ボトルは薄まらない、味が維持する。

〜抜栓直後 1週間後(高度1000m山の中)〜

旧ボトル

なぜかアルコール感が強く感じる。抜栓直後よりも荒々しいキャラクターが出てくる。
昔のタリスカー 57°ノースのような、アタックの強いアルコール感。もし最初にコレを飲んだら印象が結構違うかも。
香りは強く熟成したシェリーの良質な感じが出ている。高度が高いと繊細なニオイがキャッチしにくい、全く同じウイスキーを前日の夜に飲んだばかりなのに、全然印象が変わる。

新ボトル

アルコール感が抑えられてまろやかに感じる。スムースでブレンデッドウイスキーのよう。
バランタイン17年のような滑らかな風味が出ている。塩みが出ている。
グラスに注いで2時間以上たったアイラのようなくたびれたニオイ。

この時は全体的に鼻がバカになって役に立ちませんでした。

アランモルト10年〜旧ラベルと新ボトルを比較まとめ

しかし高原はウイスキーのテイスティングに向いていない!強い香りしかキャッチできない。
バラなどに含まれるリナロールの香りが特にキャッチしにくく、上下がスパッと切れたMP3のような感じ。

とにかく分かったことは、(多分)旧ボトルの方が美味しいということです!
SNSなどで検索してみると、「新ボトルの方が美味しくなった」「旧ラベルの方が好き」など意見は様々です。
何しろドライな方が好きな人と甘い方が好きな人が居るわけで、意見が割れてもおかしくありません。

しかし香りという面から言うと旧ボトルの方が芳醇と言えますし、水割りやハイボールにしたときも、旧ボトルは薄まることなくコクがありますが、新ボトルは薄まって水っぽくなってしまうことは否めません。
まだまだ旧ボトルは買うことができるので、完全に売り切れになって高騰してしまう前に、ぜひとも両方手に入れてどちらが美味しいか比較してみて下さい。

ちなみに「6千円以下で本当に美味しいウイスキーはどれ?同時抜栓した比較レビュー」をしましたが、もしかして3000円代で買えるアラン最も美味しい部類に入ります!ラガヴーリンも美味しいですが、旧瓶は特に同じくらい美味しいので今のうちに買ってみてね。

2020年4月27日 追記 抜栓して2ヶ月後 @新宿

アラン新旧10年、同時に抜栓してついに2ヶ月経ちました。
どんどん香りが変化して落ち着きピークを迎えつつあります。飲んだ回数は10回程度で残量は約半分。
なるべくバランス良く飲んでいますが、旧ボトルの方が少し減りが多い状況です。

本日はリーデルのシングルモルトウイスキー専用グラスでテイスティングしてみます。山の中ではなく新宿で体調も8割以上整っている状況です。16時45分。

新ボトル

香りは硬かったアルコール感が落ち着き、やや未熟な西洋梨(ラフランス)が出てくる。新しい木の香り。焙煎後2週間放置したコーヒー豆。
飲むとアルコール感は非常に弱い。コクがない、余韻が短い。薄いカラメルの味、ボディはスカスカで甘すぎる。

新ボトルはチューリップ型で飲むと良い。

旧ボトル

香りは、べっととした生キャラメル(グラスに入れて数分で飛ぶ)、シダー、乾きかけの塗料溶剤、公園のベンチが乾く途中みたいな?余り良い香りとは言えない。
飲んでみるとコクがあり信じられないウマさ!昔のグレンリベットのように毎日飲みたい即減るタイプ酒質。

しかし今回使ったシングルモルトウイスキーのチューリップ型のグラスが悪い!ビンを直接嗅ぐと良い香りがするのに、チューリップ型だとネガティブ要素が前面に来る。
この旧ボトルはクープとはいかないまでも、口が横に広がっている背の低いものがお勧め。なんなら短いショットグラスでも。

これロット差あるのかな?ネットで検索すると新ボトル美味しい!とレビューをしばし見かけますが、このボトルに関して言えば薄まったウイスキー的な何かとしか言いようがないほどです。3月に銀座の有名な某店で購入したものです

アランモルト10年バッティングで無限に遊べる!

無事にテイスティングを終えたのですが、1ショットも飲んでないのに疲れてしまい、片方のグラスにポイッと混ぜてしまいました。混ざったグラスを恐る恐る嗅いでみたのですが、バランスの良いアラン10年に生まれ変わっているでは無いですか…。

これって無限に遊べるのでは?!
シングルモルトのバッティングは難しく、ほとんど手を出した事がないのですが、同一の蒸留所の、同一の年数であればキャラクターが似ているので初心者でもブレンドを楽しめると思います。旧ラベルのネガティブな香りと、新ラベルのアタックの弱さを混ぜることで補完できるかも……。なんて楽しい遊びを発見してしまったんだ。これで暫く暇をつぶそう。

ちなみに約1:1で割ってみたのですが、これの量を調整して君だけのオリジナル アラン10年を作ってみてね!

関連記事:アランモルト10年と21年の旧ボトル比較

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1989年 静岡市出身。主な執筆分野:ライフスタイル、旅行、料理、お酒。